5月11日、民主党の小沢代表が突如辞任を表明した。当初、不可思議に思われたそのタイミングだったが、記者会見に出席し、周囲の議員を取材し、改めて検証し直してみると、じつによく練られたものであることがわかった。
〈平成21年度補正予算案の衆議院での審議が終わるのを待ったうえで、速やかに代表選挙を実施していただきたいと思います〉(小沢代表辞任会見)
何より、これによって小沢民主党は、予算審議を含めて国会日程の主導権を握ったのが大きかった。国会対策を事実上終了させてしまったことで、麻生首相の持つ「解散カード」までをも一瞬にして、限定的なものにしてしまった。さらに、代表選で新代表を選ぶと明言したことで、その後の民主党の党勢回復にも一役買うものであった。
つまり、小沢代表は自らの辞任によって、強烈なボールを麻生首相に投げ返し、政治的に攻守逆転に成功したのだ。
ところが、である。せっかくのそうした戦術も、翌日には完全に無意味なものとなってしまった。その理由は、代表選のスケジュール設定にある。
政治的な是非はひとまずおいて、少なくともメディア対策上は、民主党は「敵」や「過去」から何も学ばない稚拙な政党であることが露呈してしまった。翌日の両院議員総会で、鳩山由紀夫幹事長はこう語っている。
「速やかに新代表を選出すべく、本日開催した常任幹事会、両院議員総会において、党規約に基づき、『2009年5月の民主党代表の選出に関する特例規則』及び代表選挙期日を決定、承認いただき、同特例規則にもとづき、5月16日の午後12時30分より両院議員総会を開催し、新代表を選出することといたしました」
13日までに立候補を表明したのは、当の鳩山由紀夫幹事長と岡田克也副代表のふたり。よって、選挙期間は実質2日間、それで新代表を選ぶという。
この決定を表現するとすれば、可能な限り、控えめな表現をもってしても、民主党の広報担当者はメディア戦略がいったい何であるかをまったく理解していないか、あるいは、まったくの愚か者であるかのどちらかであることが判明した。