小売り業界での値下げ競争に迫車がかかっている。急激に縮少する市場を前に、大手小売り業は、稼ぎ頭で“頼みの綱”のPB(プライベートブランド)商品にさえ廉価版を投入するほど売り上げ確保に躍起だ。台頭する地域密着型のディスカウンターの後塵を拝し、展望のない戦いに入っている。
「子ども服の西松屋では、どうしてイオンの半値で売っているのか。悔しくてもなんでもいいから、ともかくまねて作ってみろ」(岡田元也・イオン社長)
岡田社長が檄を飛ばして誕生したのが、小売り価格380円の子ども用Tシャツだ。
国内最大の総合スーパー、イオンは「イオンの反省」と広告で銘打ち、なりふり構わぬ値下げ策に打って出た。
策の一つが、廉価版PB(プライベートブランド)商品「ベストプライスbyトップバリュ」の投入だ。すでに5000品目あるイオンのPB「トップバリュ」はメーカー商品より1~3割安いが、新たに投入するベストプライスは3~5割安の価格に設定するようだ。
先の子ども用Tシャツ380円がその一例。順次商品を投入して500品目にまで拡大する。トップバリュで78円のカップ麺は、ベストプライスでは68円で登場した。
この1年間、大手小売り業は、“高品質、低価格”をうたい文句に、PB商品の売り上げを急拡大させてきた。そして、ここにきて、さらに“低価格”を前面に出した廉価版のPBを投入する動きが出ている。
セブン&アイも廉価版PB投入を模索
セブン&アイ・ホールディングスでも、ディスカウント専用PBの開発に取り組んでいる。3ヵ月後をメドに発売される予定だ。
セブン&アイは、2008年8月から始めたディスカウント業態のスーパー「ザ・プライス」の成功に自信を深めており、今年は一気に20店舗に拡大する。
1号店の西新井店をオープンした当初は、「成功する確信はなかった」(渡辺泰充・イトーヨーカ堂売り場開発第2プロジェクトリーダー)と手探り状態だった。だが、商品数を絞って販売管理費を抑え、売価を安くするディスカウント手法が客数増につながり、西新井店は業態転換前と比べて、「レジ通過客数が1.7~1.8倍」(渡辺氏)に跳ね上がった。
さらに2号店の川口店は、2キロメートル圏内にスーパーが15店舗林立する大激戦区だが、ここでもマーケットシェアを高めることに成功した。