就職協定を論じたり、制度の改革を声高に叫ぶよりは、まず、現状をいったん受け入れて自分で働いてみることだ。

 会社側からいえば、この就活のプロセスとのギャップを突いて、もっと特色ある採用を進める企業が増えることは大事である。リクルーターがべたべたで学生と向き合う会社や説明会や面接でも形をつけずにざっくばらんで話をしてくれる会社に娘も興味を引かれたようだ。優秀な学生を獲得するチャンスになるかもしれない。

「組織で働くこと」
のすばらしさ

 私はかつて弁護士などの自由業に憧れていた。庶民的な商店街で育ったので、自由な雰囲気が心地よかったからだ。周りの友達も、酒屋、八百屋、眼鏡屋だとか「屋」のつく家の子供が多く、銀行や役人の子はほとんどいなかった。当時の商売人は、勤め人のことを『月給とり』と呼んでいたが、少し揶揄するニュアンスもあった。

 ところが今は若い時に組織で働くことはすごく意味があると実感している。先輩から納得できない指示を受けたり、自分の存在を否定されることもあるだろう。でも、それも間違いなく社会の一コマである。その中で、働くことの意味を自分なりに見出すことこそ、大人になることだ。その対比では、僕の周りにいた商店主はちょっと自分勝手でわがままだなぁ(それはそれでよいのだが)と思える。

 前にも書いたように、組織で働くことは、どんなビジネススクールや資格学校よりも価値がある。 就活に取り組み始めた頃、娘に「新入社員の時に会社から受け取るのは、給料ではなくて、仕事の経験、知識、人との付き合い方だ」と話したが、就活のプロセスを経てさらに私はそう思うようになった。

■4月16日

 以前に訪問していた倉庫会社から、忘れたころに内々定がでた。また落ちたと思っていたエネルギーC社から最終面接の連絡が来た。それを私に話す娘の声は元気に満ちていた。やはり評価されるのは、何より嬉しいのだ。

 就活のスタートでは、志望度の高い会社なのに、エントリーシートを出しても連絡が来なかったり、初めの面接で続けて落ちたことを考えると、4月に入って「面接のコツがつかめてきた」との娘の発言も本物かもしれない。

 娘には、また変化が生じた。

<次回に続く>