小さな成功体験の積み重ねで、
人は育つ。

 大事なのは、気持ちの切り替えです。
 プライベートでうまくいかないことがあろうが、仕事がうまくいかずに悩んでいようが、それはそれ。仕事場に立つということは、舞台に立つということ。働くときには、みんな役者です。いや、役者にならないとダメなのです。

 そして、舞台に立ったら、完全なショータイム。お客様に喜んでもらうために、役割を演じ切るのです。これを意識するようになってから、少しずつ職人として成長できるようになったような気がします。

 もちろん、一直線に成長するなんてことはありません
 働いているうちに、気がついたら不機嫌になっていたりました。ついつい雑な仕事をして先輩に叱られることもありました。だけど、「あかん、あかん。俺は役者や。切り替えていこう」と、繰り返し繰り返し気持ちを切り替える努力をする。それを続けることで、だんだん変わっていきました。

「なんか変な雰囲気になってきたな……」
「お客様も楽しそうじゃないな……」
 と感じたら、気持ちをリセットして、元気いっぱいに声を出してみる。余計に仕事に心を込めてみる。すると、同じ照明器具だけど、実際にお店が明るくなるように感じる。きっと、感じ方が変わるのでしょう。それが、お店のカラーをつくっていくのです。

 お店の雰囲気がよくなったら、お客様からの反応もよくなります。「おいしかったよ」「また来るわ」。そんな声をかけられたら、こっちも嬉しい。だから、もっとがんばろうと思う。こんな小さな成功体験を積み重ねて、少しずつ「おもてなしの心」が身についていくのではないかと思います。