ウェイノと同じ部屋になると、俺たち2人を止められるものはなかった。ウェイノは部屋に店をオープンした。売店の品をほかの受刑者と倍の値段で交換するんだ。ポテトチップが1袋欲しいのに受刑者口座に預金がないときは、ウェイノのところへやってくる。ウェイノは1袋渡して相手の名前を書き留め、後日、2袋で返済させる。同室になる前、俺は、「ここで必要なものがあったら持っていけ。スープなんかどうだ」と言った。

「マイク、何かくれても転売して儲けるだけだ」と、あいつは言った。あれこれ渡してやって、同じ部屋になるころには、俺たちの店はほかの部屋に在庫を預けなくちゃいけないくらい大きくなった。

 売店の日用品やクッキー、煙草、ポテトチップスも売ったが、俺は有名人の立場を活用することにした。ちょうど、作家で詩人のマヤ・アンジェロウが俺を訪ねてきて、彼女といっしょに写真を撮った。ある晩、腹が減ったとき、誰かが俺の好物のドーナツを持っていた。

刑務所を訪ねたマヤ・アンジェロウと。(photo:courtesy of Mike and Kiki Tyson)

「おい、ブラザー、アメリカの〈知性の女王〉マヤ・アンジェロウがあるぞ。この写真を見ろ。少なくとも50ドルはする代物だ」と声をかけた。

 そいつは写真を見て、感激して泣いていた。俺の口座に10ドルずつ小分けに入れて、50ドルを完済した。有名人が訪ねてくるたび、何度も同じことをした。

 手紙を書き送ってくる女のファンの中には、自分のエッチな写真を送ってくるのもいたから、写真と手紙を別々に売った。マスをかく材料が欲しかったり、女を恋しがったりするやつらにだ。写真と手紙をセットで売ることもあった。写真にもよりけりだが、どの購買層がどの女に魅かれるかもだんだんわかるようになってきた。中西部の森を思わせる純朴な感じのがあれば、無学な労働者タイプのところへ行って、「こいつはどうだ?」と声をかける。面白いことに、そんな客の中には、女に手紙を書いて結婚することになったのもいたんだよ。

 その後、エッチな写真からテレフォンセックスへ売り物が進化した。インディアナポリスの午前7時はロサンジェルスの午前4時。クラブの営業時間が終わるころだ。コレクトコールで友人に電話する。すると、そいつが自宅に女を2、3人呼ぶ。

「プレイボール!」コレクトコールを受けると、あいつはそう言った。あいつと女たちがセックスするところを聴かせて、男どもからカネをふんだくる。ときには、客の名前を事前に調べて、その名前を口にするよう女たちに指示した。

「おお、ジョン、たまらない。もう濡れてきちゃった」と、女が言う。そんな素人演技にジョンはいそいそとカネを払った。

 外の友人たちに女を抱かせることまであった。シカゴの街でセクシー系のクラブを持っているのがいて、手紙を書き送ってきた女をそいつのクラブへ送り込んだ。そいつに調べさせて、上物かどうか確かめるんだ。あれは将来への投資だった。いい女だったら、出所したとき会いにいこうってことだ。