檻のなかの
王族のような暮らし

 ウェイノと2人、精力的に働いた。店は7、8室まで拡大していた。ウェイノが記録をつけ、支払いを渋るやつがいると俺が力を振るう。

 ちょいと訪ねていって、「この野郎、カネ払え」と脅してくる。ほかの誰かに借りさせても払わせた。

 刑務所の中だってのに王族みたいな暮らしだったな。ウェイノは厨房で働く白人や受刑者のために麻薬を持ち込む腐った警備員たちとつながっていたから、アイスクリームが振る舞われているとき以外、食堂で俺の姿を見かけることはなくなった。

 たいていの夜は部屋でくつろいで、ピッツァや中華料理、ケンタッキーフライドチキン、〈ホワイトキャッスル〉のハンバーガー、その他もろもろを注文して、刑務官たちに届けさせていた。ロブスターやバーベキューを食うこともある。ウェイノは初めて海老炒飯を食ったのは刑務所の中だと言ってたな。クレオパトラが題材の本をあいつが朗読し、2人でメシを食いながら大学の学生寮みたく討論した。家庭料理が恋しくなるとシディークに電話をして、あいつの女房に紅鮭のステーキとサラダをこしらえてもらった。絶品だったよ。

 俺にはもっと大きな部屋が必要だった。ウェイノといっしょに共通の友人のデリックを訪ねた。そこは角部屋で、ふつうの部屋よりずっと大きかった。もう俺の部屋では、郵便物だけであふれ出そうだったんだ。

「ウェイノ、なんとかならないか?」

 うちの寮のアドバイザーをしていたターナーという男と会う段取りを、ウェイノがつけてきた。ターナーの上役は全寮責任者のダルトンだ。2人で腰を下ろし、もっと大きな部屋が欲しいとウェイノが切り出した。あいつはこういう交渉事が得意だった。以前、刑務所の運営者たちとのあいだで開かれる公聴会で受刑者代表を務めていたからだ。俺たちの「もっともな理由」について、あいつは巧みに弁舌を振るい、「俺たちの丁重な要請」を上層部に検討してもらえないかと説得した。ところが、いかにも役人らしく煮え切らないターナーに、だんだん俺はいらだってきた。

「つまり、ダルトンさんと週末に出かけるときとかまで、部屋の問題は検討してくれないってことか?」と、凄みを利かせて詰め寄った。

 ターナーの青ざめた顔がいっそう青くなった。

「わかった、ミスター・タイソン、すぐ確かめよう」

 もちろん、大きな部屋には移れなかった。