一方の株式会社の生保であっても契約者のために存在しているのは相互会社と同様だが、株式会社であることから資金調達はやりやすい。この差は小さくない。相互会社に比べて、剰余金を将来収益のための大型買収などにはるかに投じやすくなるからだ。

 これが、第一が株転を選択した理由に他ならない。それだけ第一が国内の生保マーケットの成長性に危機感を抱いているのだ。収益の大半を国内の保険事業に依存する生保にとって、少子高齢化や生産年齢人口の減少により、将来的に競争力のある商品やサービスの提供が困難になることは確実だ。

 その兆候はすでに表れている。医療保険など第三分野へのシフトがあるとはいえ、収益の源泉である保有契約高は減少し続けており、ピークだった1990年代後半の約1400兆円から現在は、約860兆円にまで減っている。

 それ故、第一はこれまでもベトナムやタイ、インドなどアジアを中心に生保事業へ取り組んできた。だが、アジアの将来性は高いもののシェア2%弱と規模が小さ過ぎる。そこで目を付けたのが世界最大の生保市場である米国であり、プロテクティブだった。

 買収交渉は昨年秋ごろから始まり、今年春ごろから急速に進展し始めたという。交渉担当者の1人である隅野俊亮・グループ経営本部兼経営企画部部長は、「共に100年以上の歴史を持つ保険会社であり、米国企業には珍しく経営陣の社歴も長い上、優秀。何より価値観が合う」と話す。

 何よりプロテクティブは70年代以降の40年間で、47件もの生保事業を買収してきた実績を持つ。これは、クローズド・ブロックと呼ばれる他生保が蓄積してきた保有契約を買うというものだ。とりわけプロテクティブは、それら保有契約の目利きや管理事務に優れているという。

 さらに、オーストラリアのダイレクト生保販売の最大手で、第一が11年に完全子会社化したTALグループとの連携も視野に入れる。「同社のノウハウを、ダイレクト販売に手を伸ばそうとしているプロテクティブに生かすことができる」(隅野氏)という。

 つまり、第一の狙いは買収による約401億円の利益の取り込みだけではなく、グループ化した各生保のノウハウを相互に利用し合うことでマルチチャネル化を一気に進めることなのだ。営業職員頼みのドメスティックな国内生保事業からの脱却に他ならない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)