一方、労働契約法改正で、有期雇用契約が通算5年を超える場合に働き手の申し出で無期転換するルールが導入されたことも踏まえれば、今後、企業には従来型正社員の割合を減らし、人件費の低い「賃金限定社員」の割合を増やすという人材ポートフォリオの組み替えを行う誘因が働く。現場人材の人手不足で非正規の正規化の動きが広がっているが、本来、それによって期待される平均賃金の上昇が、労働契約法改正の時期が重なることによって、「賃金限定社員」の割合を増やすことで相殺される形になりかねない。

政・労・使がビジョンを共有するため
政労使会議のバージョンアップを

雇用制度改革に求められる重要な意義は、企業が環境変化に応じて事業構造を見直し、生産性向上を通じて家計所得向上の原資を増やすことにある。その意味で、事業構造転換を促進するには、「欧米型」の限定正社員の普及が不可欠である。この「欧米型限定正社員」の場合、雇用保障が低下する以上、既存正社員対比賃金が劣ることは許されない。

 このタイプの正社員を本格的に導入することで、既存事業を前提に人件費抑制のために人材ポートフォリオを考える受動的人材戦略から、事業転換によって人件費増を可能にする人材ポートフォリオを考える能動的人材戦略が可能になる。

 経済の自律拡大メカニズムを強めるには、そうした雇用制度改革を前提に、生産性向上と賃金上昇を連動させる労使間の自主的ルール作りも必要である。

 これらをトータルに実現するには、政・労・使の三者が目指すべき経済社会のビジョンを共有し、その実現に向けた具体的な利害調整を、建設的なブレークスルーを目指して議論を重ねる作業が欠かせない。真に雇用の岩盤規制に穴をあけるには、そうした問題意識のもとで、政労使会議という仕掛けを、大幅にバージョンアップして活用していくことが必要であろう。