それまでのウェザー・リポートは、ジャズ愛好家たちが高く評価する硬派なジャズ楽団でした(電気を使ったジャズという理由で一部では嫌われてもいましたが)。

 71年のデビュー以来、次々と問題作を発表していましたが、難解で聴きやすさはなく、自分たちがやりたいようにやっていました。勿論、それは悪いことではありません。が、音楽は演奏する側とそれを聴く側で成立するコミュニケーションでもあることを考えれば、独り善がりでは真の音楽的興奮に達することはできません。

 “バードランド”はポップな曲ですが、実際は非常に難しい音楽的な冒険を沢山含んでいます。とても難しいことを何事もなくやっているところが、ただのポップスとは異なる深みを醸し出している所以です(その証拠に、ジャズの王道を歩んできたメイナード・ファーガスンも彼のビッグバンドでカバーしています(写真))。

 例えば、イントロで主旋律を誘導する音がベースであることです。通常は、ベースは伴奏に徹するのですが、ここでは主旋律を引っ張ります。しかもこの音色は、エレクトリック・フレットレスベースによるハーモニックス(フラジオレット)奏法です。やってみれば分かりますが、簡単には出ない音です。

 更に、ピアノの伴奏とシンセサイザーによる即興演奏、パーカションとドラムが刻む、沸き立つようなリズム、主旋律と即興のテナーサックス。最高の実力者が揃い、それぞれの楽器を一心同体となって演奏し、全てが一つになり最強の音楽が生まれました。

 ここに至る道のりを考える時、ジャズバンドにおけるチームワークの意味は明確です。切磋琢磨し鼓舞し合うことで壁を破るのです。そして、それまでに到達し得なかった高みに立つことができるのです。

 ウェザー・リポートの音楽的冒険の来歴は非常に興味を引きます。

新しきジャズを目指す
冒険者たち

 ウェザー・リポートの音楽は、一般的なジャズからイメージできる、いかなる響きとも異なります。言葉で表すのは極めて困難ですが、敢えて言えば、ロックとジャズとクラシックの要素が、ぐつぐつと沸騰したリズムのスープの中に溶け込んでいます。音楽を分子・原子の段階まで解体して、今までに試みたことのない自由度で、音楽に再生しています。結果、味わったことのない極上の味が生まれているのです。