ジャコが初めて録音に参加したのが「ブラック・マーケット」(写真右上)です。このアルバムは、2代目ベース奏者のアルフォンソ・ジョンソンも参加しているので、二人のベースを聴き比べることができますが、その差は歴然。

 ジャコは、リズムと和音の結節点というベースの基本的な役割を十二分に果たしつつも、主旋律あるいは対旋律を奏で得るメロディー楽器としてのベースの可能性を提示したのです。それは革命と言っても過言ではないでしょう(トリビアですが、ジャコは、ウェザー・リポートと並行してソロアーティストとしても活動を始めていて、ソロデビュー盤「ジャコ・パストリアスの肖像」(写真右下)にベース革命を克明に刻んでいます。こちらも是非)。

 そして、今週の音盤「へヴィー・ウェザー」では、ジャコは最年少かつ新メンバーでありながら、決定的な役割を果たすのです。ザビヌル、ショーター、ジャコの新しいチームワークが冴え渡り、それまでのウェザー・リポートを超え新しい地平に立ちます。

 ジャコは、冒頭で触れた“バードランド”を筆頭に大活躍。“お前のしるし”(へんな邦題ですよね)では、実に艶っぽいベースを披露します。更にはジャコ作曲の“ティーン・タウン”では高速パッセージでロックとジャズの完璧な融合を実現しています。この音盤で功績の大きい点は、演奏、作曲、編曲、更にはジャズにポップな感覚を持ち込んだという点です。

「俺の前から消えろ!」と怒鳴られたフロリダでの出来事から1年後にはバンドの枢軸となったジャコの名が、この音盤のコプロデューサーとして明記されたのも当然でしょう。

 そして、この時期のウェザー・リポートの実力は実況録音盤「8:30」(写真左)が余すことなく伝えています。 

自己主張とチームプレイの境界

 自己主張とチームプレイは一見、相対立する概念です。が、ウェザー・リポートを聴けば、徹底的に自己主張することで最強のチームプレイが生まれるのだと実感します。

 ザビヌルもショーターもジャコも自己名義のアルバムを発表するだけの力量を持って屹立しています。その彼らが一心同体で最高の秘儀と技法を応酬し合って新しい境地に至ったのです。

 本物のプロフェッショナリズムがここに在ります。

(音楽愛好家・小栗勘太郎)