抗インフルエンザウイルス薬の備蓄が整い、新型インフルエンザワクチンの輸入が実現へ向けて動き出したことで、新型インフルエンザの被害拡大を防ぐための必要な手当てに一応のメドが立った。だが、まだ安心はできない。新型インフルエンザの被害を極小化するうえで、不安要素は少なからず残っている。(『週刊ダイヤモンド』編集部 佐藤寛久)
新型インフルエンザの流行が本格化の局面を迎えている。
今年8月、インフルエンザの流行シーズンか否かを判定する「定点当たり報告数」(一医療機関当たりの受診者数。以下報告数。国立感染症研究所調べ)は、流行が始まったことを意味する、1.00を突破した。8月下旬こそ横ばいで推移したものの、9月に入って感染拡大は再び勢いを増し、9月20日までの1週間の報告数は、4.95に達している(【図1】参照)。
その数字から患者数を推計すると、約27万人が病院でインフルエンザの治療を受けたことになる。
【図1】 |
通常の季節性インフルエンザが大流行する年なら、流行が始まって1~2ヵ月程度で、報告数はピークに達し、30を超える。その点では、流行開始から1ヵ月で4.95は比較的低めの数値ともいえる。
しかしそもそも、8~9月は、ウイルス感染が起こりにくい時期だ。【図1】で見ても、例年、この時期のインフルエンザの報告数は皆無である。気温が下がり、湿気もなくなるこれからこそが、インフルエンザの感染拡大の本格期と見るべきだろう。感染拡大のスタート地点と考えれば、現在の4.95という報告数はきわめて高いともいえる。
ワクチンあっても少なくない家計負担
もっとも、本格的な流行期を控えて、政府の準備は着々と整いつつある。新型インフルエンザワクチンは、国産で約2700万人分、輸入で約5000万人分、確保できる見通しが立った。
タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザウイルス薬については、8月末までに備蓄分として約4500万人分が確保されている。メーカー在庫、流通分は年度末までに約2700万人分に達する。
これらの数値を合算すれば、約1億4900万人分となり、1億2000万人の国民を軽く超える数のワクチン、治療薬が揃うことになる。ワクチンについては、現在のところ、2回接種を前提にしているが「1回接種でも有効」という結論が得られれば、さらに多くの人数分になる。