ダイヤモンド社刊 2520円(税込) |
「市場、技術、流通チャネル、価値観など、企業のまわりにある一切のものが変化のさなかにあるとき、部屋で報告を待っていたのでは手遅れになる」(『未来企業』)
ところが、確立された大企業ともなれば、経営幹部は、自室と会議室との往復だけとなりがちである。これに時折、経済団体の会合が加わる。
ドラッカーは、経営幹部に対する最も有効な助言は、休暇を取ったセールスマンに代わって顧客を訪問することだという。あるいは、店先に立って客の相手をすることだという。
あるハンバーガーチェーンの創立者は、いつも外から自分の店の中を観察していた。ある靴屋チェーンの創立者は、いつも繁華街をうろついていた。ドラッカーの知っているある病院では、その病院幹部は年に1度、1泊入院することにしているという。
成果というものは、企業の内部には存在しない。顧客が注文をしカネを払い込んでくれるまでは、内部に存在するものはコストだけである。
したがってドラッカーは、最初になすべきことは、外に出かけることを習慣化することだという。外に出かけることによって、初めて顧客に接することができる。接して初めて顧客が誰であり、顧客にとっての価値が何であるかを知ることができる。
「わずか2日間カウンターの後に立つことによって、自分の会社についていかに多くを学べるかということには、驚くべきものがある」(『未来企業』)