そして、こうした難病は患者にとっては深刻な状況をもたらす病でありながら、患者数が少ないために新薬や治療法の開発がなかなか進まないという事情もある。ALSの場合は、世界で約12万人、日本には9000人弱の患者がいるとみられる。これに対して、例えば、生活習慣病の代表である糖尿病の患者は、国内だけで237万人にも達する。新薬の開発には100億円から1000億円かかると言われる中で、製薬メーカーにすれば、患者数の少ない(市場場規模の小さい)分野に、多くの資金や開発者を投入することは難しい。つまり、市場原理に乗りにくいのだ。

 多くの著名な経営者たちも、「ALSバケツチャレンジ」に参加している。彼らは市場原理の中で、知恵と勇気をふるって成功してきた人々だ。企業に社会的責任があるとすれば、市場原理に乗りにくいが、社会的には深刻で解決が求められる問題に、どう対処したらよいのか、そこまで踏み込んで問題提起をしてほしい。もちろん「ALSバケツチャレンジ」のような活動は、その谷間を埋める一つの解であることは間違いない。ただ多くの費用と継続的な取り組みが必要なケースにおいては、寄付行為だけではまかないきれない。

 そして、議論が広がりと深まりを欠くのは、だれが氷水を被ったか、なんと言ったか、という表面的な部分にばかり焦点を当てて報道するメディアの責任も大きい。それこそ視聴者から「本当におバカなのはあなたたち」と言われてしまいそうである。