草間彌生Photo:SANKEI

いまや世界的な人気を誇る日本の現代アーティスト草間彌生。しかし、そのキャリアは順風満帆だったわけではない。若くして注目を集めながら、一度は評価が落ち込み、長い停滞期を経験したのち再び脚光を浴びた――いわば「再ブレイク」を果たした作家である。実は、美術史に名を残す多くの巨匠が、同じような浮き沈みの軌跡をたどっている。いったん人気が低下した作家が、どのようにして再評価されるのか。藤田嗣治らの例も手がかりに、「再ブレイク」するアーティストに共通する決定的な特徴と、アートの世界特有の評価の仕組みに迫る。※本稿は、美術評論家の秋元雄史『芸術の価値とは何か AIが奪い尽くすからこそ、アートに“解”がある』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。

美術史に名を残す作家は
生涯で二度ブレイクする

 美術史に名を残した数々の作家の生涯を「人気」という観点から眺めてみると、ある興味深い共通点が浮かび上がります。それは、多くの作家が生涯のなかで一度は売れない時期を経験しているということです。

 彼らは、のちに美術史に残るほどの傑出した才能の持ち主なので、多くは若くして注目を集め、時代の寵児としてもてはやされます。しかし、その後徐々に人気は低下し、一度は表舞台から姿を消し、地下に潜ったような状態になる人もいます。しかし、どん底の時期から一定の期間が経過すると再評価され、第二のブレイクを果たすのです。このようにして確立した評価は、時間の試練を経て安定したものへと変化していきます。

 たとえば、このような再評価の典型例としては、草間彌生や藤田嗣治が挙げられます。

 草間彌生は、戦後間もなく日本で活動を始めたのち、1950年代末に単身渡米し、ニューヨークのアートシーンで、前衛的なパフォーマンスやインスタレーションによって国際的な注目を集めました。