例えば、麻生副総理はアベノミクス「第1の矢」「第2の矢」推進の中核であった。安倍首相と「リフレ派」と呼ばれる経済学者たちを結びつけて「日銀包囲網」を形成し、大胆な金融緩和を実現させたのは、麻生副総理だとされる。また、「異次元緩和」を断行した黒田東彦氏の日銀総裁起用にも強い影響力を発揮した。更に、財政拡大論者として、公共事業の拡大も推進した(第51回・P2を参照のこと)。

 しかし、成長戦略実行の段階になると、麻生副総理の持ち前の「ほどこしの精神」が問題となってくる(前連載第22回を参照のこと)。公共事業が尽きて、斜陽産業が再び危機に陥る時に、それらを切り捨てて、産業構造転換を決断するのは、「優しい」副総理には難しいだろう。むしろ、公共事業の継続、日銀による国債の更なる引き受けを訴えるのではないだろうか。

 甘利明経済財政再生相も同様である。環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る日米協議では、首脳同士が妥結できない交渉を、ギリギリまで粘った(第86回を参照のこと)。成長戦略の策定にも尽力してきた。だが一方で、これまで族議員や省庁を抑える方向に政治力を発揮した形跡は見えてこない。財政再建にあまり関心がないようにも思える。今後、成長戦略を実現していく過程で、甘利経済財政再生相に省庁・族議員の予算要求を抑える力はないだろう。むしろ、経産省との関係が深い経済財政再生相は、成長戦略の予算獲得に邁進するかもしれない。

党三役全員交代:
谷垣幹事長は二階総務会長率いる「族議員」と融和する

 一方、党役員人事では、石破茂幹事長、野田聖子総務会長、高市早苗政調会長の党三役が全員交代となった。野田総務会長、高市政調会長は、女性議員で初めて三役入りした「安倍政権の目玉」であったが、閣僚経験が少なく、経験不足であり、党内調整力を発揮するには明らかに「軽量」であった(第51回・P6を参照のこと)。

 安倍政権発足と同時に、公共事業や金融緩和が「異次元」規模で派手に打ち出されると、自民党本部に、陳情に訪れる業界団体の自治体関係者が押しかけた(第51回・P7を参照のこと)。また、国土交通部会や農林部会など党政調会の各部会では、族議員から予算増を求める大合唱が起きた。