安倍晋三首相は、当初の予定通り消費税率を現行5%から、2014年4月から8%に引き上げると決断した。消費増税の決定で、国際公約ともなっている「2015年度までに国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の国内総生産(GDP)対比の赤字を10年度比で半減、20年度までに黒字化する」という財政健全化目標の達成に、ようやく一歩踏み出すことができたといえる。
一方で安倍内閣は、増税によって、ようやく明るさの見え始めた景気が腰折れするのを回避するために、公共事業など補正予算、企業に設備投資と賃上げを促す減税措置などの経済対策も合わせて発表した。財務省は、昨年度の余剰金とアベノミクスによる増収などで、2兆円程度の補正予算を新規の国債発行なしに組めるとみている。だが、衆院選の勝利で族議員の勢いが増しており、公共事業も効果を検証して絞り込むことができなければ、財政赤字が更に拡大しかねない。また、法人税を1%下げると4000億円の税収減になるため、国際公約の達成が難しくなりかねない。
今回は、安倍内閣が財政健全化の国際公約を達成できるかを、内閣・党幹部の「人事」から検証する。
「安倍人事」を評価する
――財政再建より景気回復優先が鮮明
安倍首相は、内閣改造・自民党役員人事について、麻生太郎副総理・財務相、甘利明経済財政・再生相、谷垣禎一法相ら現閣僚と石破茂幹事長、高村正彦副総裁、高市早苗政調会長、野田聖子総務会長ら党幹部を、すべて留任させた。一方、若手中心の副大臣・政務官については、交代となった。副大臣には、女性議員を4人起用し、小泉進次郎自民党青年局長を内閣府兼復興政務官に起用した。
安倍首相は、来年度予算の編成・審議は現閣僚で行う考えを示している。しかし、この連載では以前、「安倍人事」はアベノミクスの財政拡大路線の推進には適しているが、中長期的な財政規律の確立に舵を切るのは困難だと評した(第51回を参照のこと)。これを簡潔にまとめることから、議論をスタートしたい。