年末、「第63回NHK紅白歌合戦」を実家で観た。AKB48から演歌、矢沢永吉さんに美輪明宏さんまで、ジャンルの幅広さもすごいが、貧困からロンドン五輪、そして生物多様性の問題まで1つの番組に取り込んでしまう紅白の器の大きさ、懐の深さにも驚嘆した。

 以前論じたが、世界が認める「日本の美しさ」とは、既存の常識に捉われず、自由な発想でそれを破壊するエネルギーを持つ多様な人材が、次々と多彩な分野に出現し、新たなものを生み出して、国に活力を与え続けてきたことだ(第46回を参照のこと)。紅白には見事にそれが体現されており、今後の日本の方向性に示唆を与えるものだと感じた。

「アベノミクス」始動

 安倍晋三内閣が「緊急経済対策」を決定した。積極的な「公共事業」、大胆な「金融緩和」、企業の投資を呼び込む「成長戦略」の「3本の矢」で成り立つ「アベノミクス」がいよいよ動き出した。

 事業規模20兆円超の緊急経済対策では、まず大型の補正予算を組み、民主党政権で減らされてきた公共事業の大幅な増額を柱に据えた。2012年度当初予算の公共事業関係費とほぼ同額の、巨額な財政出動である。次に、日銀による金融緩和強化を並行して進めることを決定した。金利を下げることで為替を円安に誘導し、輸出企業の業績改善を狙うものだ。

 しかし、「公共事業」「金融緩和」には将来の借金増や過度のインフレなど、大きなリスクがあると指摘されている。これらの政策は、「成長戦略」が策定されて軌道に乗るまでの「時間稼ぎ」に過ぎない。安倍内閣もそのことは認識しているようで、経済財政諮問会議を復活させ、日本経済再生本部・産業競争力会議を本格始動させた。

 今回は、安倍内閣・党役員人事の分析を通じて、「アベノミクス」による日本経済再生の実現の可能性を論じたい。