安倍政権による党人事・内閣改造が行われた。第二次安倍政権(2006年9月26日から2007年9月26日が第一次安倍政権)は政権奪回後、2012年12月26日から2014年9月3日まで617日続いた内閣で、同一閣僚内閣としての戦後最長である。民主党政権が3年3ヵ月続いた後の1年9ヵ月なので、多くの自民党議員にとっては待ち焦がれた内閣改造だった。
総理の仕事は単純にいえば二つしかないと小泉元総理は言っていた。衆議院解散と閣僚人事だけだ。どんな総理でも、常に解散の時期や閣僚人事を考えている。なので、今回の改造人事も、ある種の「老獪さ」が充ち満ちている。
政治的には増税の回避論議を封印
今回の党人事・内閣改造を見て、多くの人が増税指向と言うだろう。たしかに、消費増税の根拠となった3党合意の当事者である谷垣禎一氏が自民党幹事長になり、麻生財務相が留任である以上、12月に決める消費税増税について、政治的には増税の回避論議を封印した。谷垣幹事長は、年末の消費税引き上げの判断について、記者会見で「レールが敷いてある」と発言している。
この見方は半分当たっているが、今回の党人事・内閣改造は、長期政権に向けた準備であり、その意味から、増税で景気を悪くすることはありえず、景気維持・回復の準備も怠っていないとみるべきだろう。安倍首相は「経済最優先」と言っている。
経済最優先ならば、増税シフトのような今回の布陣は矛盾すると思う人は多いだろう。もちろん、消費増税は、経済政策としては間違いだが、政治的には簡単にはひっくり返せない(下手をすると安倍下ろしにつながる)というのが、政治の現実だ。
安倍首相に筆者は時々会うが、そのとき人事の話はもちろん出ない。ただ、印象としていろいろな状況を考えているな、というものだ。増税の凍結という政治的なギャンブル「あり」の場合と政治的なギャンブル「なし」という二つの状況で、それぞれ考えるのはトップとしては当たり前のことだ。
政治的なギャンブルをしたらどうなる?
今の自民党内情勢では、増税の凍結は政治的なギャンブルになる。もし政治的なギャンブルをすれば、どうなるか。
政権交代で長い間冷や飯を食っていた自民党議員は、政権奪取のうまみを味わいたいので、消費増税を今か、今かと待ち焦がれている。4月から消費税率が引き上げられて、今年度予算は大盤振る舞いだったので、それなりに息がつけたが、政権交代していた3年半の分はまだ取り戻していない。そこで、消費増税が予定通りできないと、困ってしまう。