今回の内閣、党役員人事の目玉は、自民党幹事長の交代に尽きる。

 内閣改造では、官房長官、財務、外務の三重要閣僚が留任となったので、内閣の骨格は変わらず、意外なほど小幅改造に終わった。

 安保法制、地方創生の担当大臣を新設したものの、全体として新味に乏しい感が否めない。

 結局、今回の人事の一義的な目的は、安倍晋三政権の長期化を阻む可能性のある火種を除去することにあったという印象が強い。

 くすぶる火種は2つあった。

 その1つは、政局、権力抗争に属するもの。もう1つは、政策、思想に関わるものだ。

 石破茂氏の幹事長更迭は前者であり、谷垣禎一氏の起用は後者の目的に沿うものと受け取れる。

最大のライバル石破氏を“更迭”
安倍首相はこれで安泰か

 首相と石破氏は、思想や政策では大筋で同じ方向に向かっている。問題は、その方向に向かう指導者として、政治手法、資質、国民的支持などで誰が適格かどうかということ。

 例えれば、目的地が同じでも、その車の運転手として適格かどうか。疲れていないか、事故を起こす恐れがあるか、運転が荒れていないか。同乗者に信頼されているか。

 助手席に予備の運転手がいれば、何かあったとき交代させられる可能性がある。予備の人がいなければ運転手の立場はよほどのことがない限り安泰になる。

 石破氏は今まで安倍首相と同格のライバルと見られてきたから、首相としては大きな脅威であっただろう。

 石破氏がさらに力をつけるかもしれない幹事長職をあえて更迭し、一閣僚として閣内に閉じ込めて、首相は大満足だろう。もう助手席に交代する人はいなくなった。