6月25日、アメリカ環境局のスティーブン・チュー長官は、首都ワシントンで、39億ドル(約3700億円)の資金を、いわゆる「スマートグリッド」のプロジェクトの支援のために提供すると発表した。これを受けて、全米各地の企業や研究機関から、資金助成の申請が寄せられる。8月頃には、30~50件程度の、プロジェクトが採択される見通しだ。

 一般にスマートグリッドは、最新の通信・制御技術を用いて、電力の供給者と消費者をつなぐ電力伝送のインテリジェント化を図り、最適な供給を可能にしようという概念を指す。日本においてこのスマートグリッドへの注目が急速に高まったきっかけは、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が日本の主要な企業に声を掛けて、本年4月13日から15日まで、米国ニューメキシコ州で、アメリカ側の政府、研究機関、企業とのミーティングを行ったことから始まる。

 一方、6月30日、東京都港区の「港区エコプラザ」で開催された低炭素経営研究会では、そのNEDO新エネルギー技術開発部の渡辺慶一氏を迎えて、最新の動向に関してお話を伺った。これから数回にわたって、スマートグリッドが、日本のビジネスにとって及ぼす意味について考えたい。

もはや単なる予算狙いの政策用語ではない

 このセミナーの聴衆には、メーカーや商社などの大手企業、中小・中堅企業で関心を持つ方々に加えて、複数のメディアからも出席があった。また、中央官庁や自治体の政策担当者からも参加を得た会となった。

 40分ほどの熱のこもったプレゼンテーションの後、次々と質問が出されて、活発な質疑応答が続いた。当日の様子は、こちらでもレポートされているのでご覧頂きたい。

 渡辺氏によれば、「スマートグリッド」とは、本年3月以前までは、予算項目を決める政策用語であった。それが、本年4月以降になって、技術的な特徴が定義されつつある段階であるそうだ。