世界のどこを訪れても「メードインチャイナ」が溢れる。最近、安倍政権が外交に力を入れる南アジアでも、家電製品から衣料品や日用雑貨品まで、中国製は人々の生活の奥深くにまで入り込んでいる。
中間層が育ち、人々は消費を渇望するようになったバングラデシュにも、中国製がなだれ込む。首都ダッカではここ1年で、スマートフォンが急速に普及したが、シェアの多くを占めるのはやはり中国製だ。
観光客相手に小型バスの運転手をするカマルさんは、スマホ片手に素足でアクセルを踏む。このギャップがいかにもバングラデシュらしいが、彼のスマホは中国の「シンフォニー」。バングラデシュではブルーカラーは中国製、ホワイトカラーは韓国製を持つのが定番のようだ。日本ブランドの影は薄い。
粗悪品だが安い中国製
高品質だが高い日本製
市内ではATMが軒並み普及、ビカシ銀行はスマホで買い物できるサービスをも提供している。いよいよ動き出した1億6000万人の市場だが、日本はいまだバングラデシュを「アジア最貧国」として認識しているのだろうか。
ダッカ在住の会社員アブドゥルさんは、近ごろ腕時計を買った。日本のテクノロジーは憧れだったが、最後に選んだのは中国製だった。
「『日本製は10年の寿命、中国製は3年の寿命だが5分の1の値段だ』と紹介され、悩んだ結果、中国製を買いました」
ダッカの、この拡大する消費市場で、人々は必ず一度は「粗悪品だが安い中国製」と「高品質だが高い日本製」を天秤にかける。