ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は、意外にアベノミクスを意識しているようだ。米ジャクソンホールでの講演(8月22日)で彼は、金融緩和が効果を発揮するには、財政政策の助けが必要との認識を示した。
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南欧の国々では、大幅な増税や歳出カットといった厳しい財政再建策や賃金カットが行われている。それらが経済の減速要因になっているときに、たとえECBが国債を大規模に購入する量的緩和策を開始しても、刺激効果は限られる。そうした見方は、ECB関係者だけでなく、欧州の民間エコノミストの間でもコンセンサス(共通認識)となっている。
日本では昨年来、公共事業の大幅な拡大と中央銀行の巨額国債購入という政策パッケージが行われている。財政で“実弾”を全国にばらまき、それに必要な政府の資金調達コストが上がらないように、日本銀行が国債を空前のペースで買い上げるという政策である。
日銀が国債を買うだけの政策に比べると、当然ながらそういった政策は直接的に需要を増加させる。慶應義塾大学の池尾和人教授が指摘しているように、今の日本の政策は事実上の「ヘリコプターマネー政策」と見なすことができる。
実質GDP(季節調整済み)の主な項目の変化にそれが表れている。アベノミクス導入前の2012年第4四半期を100とすると、公共投資(公的固定資本形成)だけが突出した伸びを示してきた。昨年第4四半期に120.3まで上昇し、その後やや落ちたとはいえ、今年第2四半期は116.6と高水準にある。
ちなみに、家計消費は99.0、民間住宅投資は100.8、民間設備投資は103.6と、微減から小幅増の範囲にとどまる。