「皆さん、今日の昼ごはんはカレーライスですよ」――。

 午後1時、京阪に拠点を持ち、Webサイト構築サービスを展開するTAM(社員数111人)の東京オフィスで、広報担当の坂田逸美さんがまるで寮母のように声をかけると、若手社員が続々と集まってきた。総勢18人。オープンスペースでは坂田さんが炊飯器から皿に白飯をよそい、特製のバターチキンカレーを手際よく盛り付ける。大きなテーブルに着席した社員たちはその熱々のカレーライスを美味しそうに頬張り始めた。

「同じ釜の飯を食べる」と社員の絆が深まる? <br />古くて新しい福利厚生が若手社員にウケる理由「同じ釜の飯を食べる」を実践するTAM。この日はカレーライスだった

 これはTAMが福利厚生の一環で導入している「米支給制度」の一場面。米支給制度とは、米炊き係を日替わりで決め、毎日昼食時に炊きたての白飯を社員に供給する同社独特の制度だ。通常は白飯だけが提供されるが、この日のように特別にカレーが用意されることもある。一同で食卓を囲む姿はまさに学生が合宿所で「同じ釜の飯を食べる」光景と瓜二つだ。

 ただ黙々と食べるのかと思えば、そうではない。たまたま隣に座った社員同士は仕事やプライベートのことを談笑する。今年1月に中途入社した菱本彩子さん(28)は「普段の仕事では接点のない社員とも話せる。仕事のやり方を教わったり、ヒントを得られたりもする」と満足げだ。

 中途入社して7ヵ月の竹前太朗さん(30)も「会議では話せない個人的な意見をリラックスして交換できる。それに同じ白飯やカレーを皆で一緒に食べていると不思議と連帯感を感じる。部活の合宿所で毎日同じ釜の飯を食べてチームが一丸となる感覚に近い」と話す。