お客さまはドンペリではなく“感情”を買っている
話をドンペリに戻しましょう。
優れたホストは、自分を無理に売り込んだり、お客さまを騙したりすることなく、お客さまのほうから喜んでドンペリを注文してもらえるようになります。
一方、ダメなホストはお客さまとそのような関係を築くことができず、「今日、誕生日だからシャンパンタワーを入れてもいい?」とゴリ押ししてしまい、お客さまに“お金目当て”を警戒されて逃げられてしまいます。
つまり、優れたホストはお客さまの「特別な人」になることに成功しているのに対して、ダメなホストはただの「商売人」にしか見られていないのです。
では、どうすれば、このような「特別な人」になれるのでしょうか? その秘密さえわかれば、ホストクラブだけでなく、あらゆるビジネスや日常生活における対人関係において、相手をハッピーにしながら、自分も望み通りの結果を引き寄せることができるWIN-WINの関係性が築けるようになるはずです。
「特別な人」になるための第一歩は、ありきたりですが、相手の心を理解することです。ホストクラブのお客さまは、ドンペリが欲しくて10万円を払うわけではありません。お気に入りのホストの役に立っている充実感や、ほかのお客さまに対する優越感など、自分の〝感情〟が満たされるからこそ、大金をはたいたり、再来店したりしてくれるのです。
つまり、お客さまはドンペリではなく、“感情”を満たすことにお金を払っているのです。
10万円のドンペリを入れさせるなんて、ホストはえげつない商売だと思われる方もいると思いますが、10万円だからこそ得られる感情というのもあるのです。
人は“認められたい”生き物
では、なぜそこまでして、人は自分の感情を満たしたいのでしょうか。それは、もともと他人から「認められたい」「褒められたい」という欲求を本能として持っているからです。
たとえば、最新のiPhoneを徹夜で並んで買うのは、もちろん興味があるからです。けれども、どこかに「流行りものに敏感だと思われたい」「注目されたい」という欲求も潜んでいます。
ベンツやジャガーなどの高級車を買うのも、同じ心理です。本来なら、車なんてどんなにボロボロでも、要は走れば事足りるはず。それなのに、あえて大金を使うのは、高級車に乗ることで「高級車に乗るにふさわしい人物に見られたい」「すごいと思われたい」という欲求を満たしてくれるからです。
iPhoneにしても高級車にしても、そのものの価値以上に、それを購入することによって得られる感情が大切なのです。