図面で投資家は説得できない

3Dプリンター自体がひとつのビジネスなり成果なりを生む可能性はいかがでしょう。

根津 3Dプリンターはとても「パーソナル」なツールです。その意味は2つあって、ひとつは個人で3D化まででき、個人で投資家を動かせる可能性も出てくること。図面で投資家を説得するのは難しいですが、3Dプリントを見せれば「かっこいい」「作ってみよう」となるかもしれません。もうひとつは、個人的なイメージをビジネス化できる可能性が高まること。たとえば「自分の似姿のフィギュア」のように、大量生産できないもののビジネス化も可能になる。僕はミニ四駆に乗せるための自分のフィギュア「ジブンドロイド」を3Dプリンターで作るワークショップをしたことがあります。ミニ四駆のマシンは自分で一生懸命作るので、レースでコースアウトしたりすると本当に悔しいんですが、それに自分のフィギュアを乗せると、より感情移入できる。3Dプリンターを使えば、そんな商品領域の開発が可能になります。

ビジョンをモノで共有すれば<br />クリエイティブは加速する東京おもちゃショー2013に出展された「トヨタ・カマッテ57s」

 従来からあるプロダクトに関しても、あらゆるプロジェクトの様々なフェーズで使い道があると思います。僕が知る限り、3Dプリンターをかなり早いタイミングで上手に活用していた企業のひとつは、魔法びんメーカーのサーモスですね。企画中の商品を早い段階で3D化してチェックするんです。CADは画面の中では完全にフリースケールですが、3Dプリントしてリアルな世界に出てくることで統一スケールになる。すると「モデリングで必死に面を張った部分がたった0.1ミリメートルだった」とか、「実際に飲んでみると鼻に当たる」とか、図面では気づかなかったことに気づく。サーモスの商品は手にも口にも触れるものだから、実物大で作れることの意味は非常に大きい。また、トヨタのコンセプトカー「Camatte(カマッテ)」の場合は、部品の一部を3Dプリンターで作りました。量産品ではないので、たった1個の樹脂パーツを金型から作るなんてあり得ない。昔は一生懸命に色んな板を組み合わせて作った部品でも、今なら3Dプリンターで簡単に作れます。