合格も不合格も、人生の上で等価値である

白川:私が司法試験の「論文試験」を受けた日、伊藤先生は、試験会場の入り口で、受験生ひとりひとりに手紙を渡していましたよね。その手紙の内容に、私は本当に救われたんです。たしか、「司法試験に受かる人はごくわずかです。落ちる人のほうが圧倒的に多い。でも落ちた人たちもほとんどが幸せな生活を送っている。ということは、受かって幸せになる人よりも、落ちて幸せになっている人のほうが、数としては圧倒的に多いんです」といった内容だったと思います。
 このメッセージを読んだとき、すごく気分がラクになった。私はそのときまで、「不合格は失敗である」と決めつけていたんです。けれど、「たとえ試験に落ちても、今日までの努力は必ず、後の人生のプラスになるはずだ」と思うことができた。伊藤先生のおかげで、穏やかな気持ちで試験に臨むことができたんです。

伊藤:合格も不合格も、人生の上で等価値である」と私は、常々、考えています。「司法試験に受かった、落ちた」はどちらも同じです。「そこから何を学び取るか」「どういう意味づけを与えて、自分がどういうふうに成長するか」が重要なのであって、「合格、不合格」に優劣はつかないんです。
 数だけで考えれば「不合格だったけど幸せです」という人のほうが圧倒的に多いはずですよね。

白川:「弁護士をしている人が幸せ」なのかといえば、必ずしもそうじゃないですから(笑)。

伊藤:そのとおり(笑)。世間的には「弁護士になったらお金にも困らないだろうし、社会的な地位もあるし、幸せでしょ~」と思われているフシがありますけど、現場にいたら、そんな単純な話ではありません。
 幸せは相対的なモノサシで測るものではなくて、「自分の価値観でつくり出す」ものです。司法試験の合否によって「幸せの量」が決まるものではない。私は伊藤塾で、「不合格者が満足する講義をする」ことを、いつも心がけています。
 合格した人が「先生のおかげで合格できました。ありがとうございます!」というのは当たり前です。それだけではなく、不合格になって方向転換した人から「司法試験には落ちましたが、この塾で学んだことが、社会に出てからも本当に役に立っています!」と言われるような講義にする
 試験に合格すること以上に、「自分の人生に役立つこと」を伝えていくのが私の使命だと思っています。

目標の「一歩先」までイメージしながら勉強をする

白川:私は学生のころから、実際の裁判を傍聴し、何度も裁判所に行きました。テレビドラマとは違う「実際の裁判」を見たことで、「もし自分がこの場所にいたら、どんな感じだろうか」とイメージを膨らませることができました。
 裁判を傍聴するようになったのは、伊藤先生に「合格したあとの自分をイメージしなさい」と教わったからなんです。どんなスーツを来て、どんなネクタイを締め、どんな話し方をしているのか。
イメージすればするほど「そんな自分はカッコイイ!」とワクワクしてきて、勉強へのモチベーションが高まりました。司法修習後に、私が裁判官になったのも、裁判を傍聴したことで、裁判官の仕事を具体的にイメージできたからなんです。

伊藤:「合格後をイメージする」というのは、伊藤塾の基本的なモットーです。勉強も仕事も、ゴールからの発想が大事なんです。司法試験なら合格後を、ビジネスパーソンなら一歩先を考える。
 当面の目標の「一歩先」まで考えることがとても大切だと思います。モチベーションを維持するうえでも、「具体的なイメージを持つ」ことは大切だと思います。

白川:私が伊藤塾の「スタディー・ツアー」に参加したとき、アメリカの「ロー・ファーム(法律事務所)」の視察(見学)に行きました。広いオフィスで、たくさんの弁護士が、イキイキと仕事をしていた。
 ツアーの参加者は30人くらいいたと思いますが、みんな目が輝いていたのを覚えているんです。でも、いまだから言いますが、私は逆でした。「こんなに広くて、こんなに人が多いところは嫌だな」と(笑)。自分のイメージと違ったんです。

伊藤:自分が合格したあとに、どういう法律家になっていくのか、そのイメージをしっかり持つことはとても大事です。

白川:本当にそうですね。いま、目的を持って「勉強」をしている人には、ぜひ、「実際の現場」を見てほしいと思います。目的や目標を決めたら、達成したあとの自分をイメージしてみる。するとワクワクしてきて、やる気も出る。勉強に対するモチベーションが、わいてくるのではないでしょうか。

(※次回の記事は、「9月30日(火)」になります


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