アジアでは空前のカジノブームが到来している。日本では「カジノ解禁法案」を継続審議中だが、いったいカジノとはどんな空間なのだろうか。筆者は今月、シンガポールを訪れた。
シンガポールは建国以来40年近く賭博を禁止してきたが、2010年、ついに“禁断の”カジノが出現した。観光立国、アジアの国際ハブ空港、国際金融都市に続く、同国第4弾の切り札である。現在、シンガポールには2つのカジノがあるが、このおかげでシンガポール政府はだいぶ潤ったようだ。公式統計はないが、2013年には2つ合わせて60億米ドルの収入になったと言われている。
チャンギ空港からタクシーに乗り込み、「マリーナ・ベイ・サンズ」へ向かった。今やシンガポールの一大観光スポットと化した、あの“三本柱に浮かぶ巨大戦艦”である。
曇天にもかかわらず、湿度は異常に高く、着ていたシャツはすぐに汗でにじむ。タクシーの運転手は黒のハンチング帽をおしゃれにかぶった“紳士”だったが、長く伸びる小指の爪に「やはり彼も中華圏の人なんだな」と思わずにはいられなかった。片道30シンガポールドル(約2600円)、20分ほど走ったかと思うと、タクシーはマリーナ・ベイ・サンズのショッピング棟1階の車寄せに滑り込んだ。
「あんたが言うカジノはここだよ」
そう言って降ろされた真正面に、カジノの入口はあった。
いきなり1階か、と内心その「敷居の低さ」に驚いた。てっきり55階建てのてっぺんの、それも奥まった一室にあるのだろうと踏んでいたからだ。タクシーから下車したすぐ真正面が賭博場であり、長い廊下もなければ、密室めいた薄暗い雰囲気もない。「外国人はこちら」と誘導された列に加わると、パスポートを2度チェックされただけで、すんなりと中に入ることができた。