新しいスタートラインに再び立つ思い

 フォーラムでは、上海市華僑聯合会の沈敏主席、上海市人民政府僑務弁公室の蔡建国副主任、日本華人教授会議の杜進代表に続いて、『新華僑』(河出書房新社)の著者である私も、新華僑の名付け親として壇上でスピーチさせていただいた。

 1993年に出版された『新華僑』の最後には、次のように書いてある。

「(『新華僑』を執筆した1992年頃)新華僑がまだ流動的でその分布図はいまの段階ではなかなか描けない。
           
 ……1992年に、数ヵ月かかって東欧を主とするヨーロッパと旧ソ連で地球をかっぽする新華僑を取材し、怒涛のように新華僑としてドナウ川やライン川、ブルタバ川、ボルガ川に流れていく中国人の群れを目の当りにした私は、山東省の黄河入海口で見た黄河の、東へ東へと流れ、決して黄土高原に戻らない雄大な光景を思い出した。

 タンポポにたとえられる新華僑たちは、無名でか弱い存在のように見えるが、そのたくましさと生命力の強さで、やがて定住先の国々の春を飾る存在となるだろう。

 海に流れ込んで二度と母なる黄土高原に戻らない黄河の水のような新華僑だが、世界経済という海のなかを縦横無尽に流れる大きな海流となって、いつかは中国という大陸に海の幸を携えて押し寄せるに違いない。その時、中国の人々も世界の人々も、今日、中国に大量に投資する老華僑を語るような、尊敬した口調で彼らを語るに違いない。彼らは、今日のための存在というよりも、むしろ明日のための存在なのである。彼らの名は、新華僑」

 二十数年経ったいま、新華僑はすでに海外の華僑社会の主力となった。その意味では、在日新華僑をキーワードにした今度のフォーラムの開催を見て、感慨深いものがあった。当年の予測が見事な現実になってくれた感激もあったが、中日関係や中米関係をはじめ、中国と海外関係の構築を促進する力の一つになるまで成長した新華僑の逞しさと頼もしさへの感動もある。さらに、新華僑という人種を優しく育ててくれた日本を含む海外の生活環境への感謝の気持ちもいっぱいだった。中国と日本、中国と海外の国々との関係促進のために、新しいスタートラインに再び立つ思いもしている。

 最後に、今度のファーラムの成功に貢献した上海側の関係者の皆さん、そして莫邦富ファミリーのフォーラム参加に多大な時間と労力を費やした幹事の皆さん、ビジネスマッチングの成功に尽力した関係者の皆さんに、心からの謝意を表したい。