経営 × オフィス

過疎が進む故郷で若者と高齢者を同時に活性化
美波町に真の地方創生策を示した若きIT実業家

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第112回】 2014年10月7日
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地元の伝説のサーファーと記念撮影をする、サイファー・テック株式会社の吉田基晴さん(左)

 吉田さんは2012年5月、故郷の徳島県美波町にサイファー・テックのサテライトオフィスを開設した。豊かな自然環境を活かして、社員の創造力を刺激する拠点にしたいと考えたのだ。「半X半IT」を実践する常駐社員を美波町に送り込み、地域活動にも積極的に参加した。地元住民へのIT利活用講座を開くなど、地域に溶け込むうちに抱える課題も見えてくるようになった。

 その年の夏から、大学生などを対象にしたインターン合宿を美波町で実施するようになった。優秀な人材を集める場としても、活用したのである。「目の前のことだけではなく、遠く離れた土地や人々のことも真剣に考えられる人材」(吉田社長の話)を欲していた。

 航空代と現地での滞在費は、会社持ちとした。全国各地から参加希望が寄せられ、選抜された大学生や大学院生たちが1週間の合宿に臨んだ。「若者の力で地方の課題を解決せよ」をテーマに、アプリケーションの開発に挑んだのである。インターン体験者から、サイファー・テックの新しい社員が生まれている。

「半X半IT」を実践して地元に貢献
自社の人材採用と業績拡大も実現

サイファー・テックが開発した観光ガイド向けのアプリ

 美波町にサテライトオフィスを開設する前のサイファー・テックは、採用難による人手不足が事業成長の足かせになっていた。それが「半X半IT」を唱える社風が評判を呼ぶようになり、人材採用と業績拡大につながっている。

 社員数は、2012年4月の7名から2014年4月には20名に増加した。勤務先は、東京が8名、徳島市内が9名、そして美波町が3名である。また、売上高は2011年の約1億円から2013年に倍増して約2億円、2014年は3億5000万円を目標とするほど急成長している。地方へのサテライトオフィスの開設は、会社にとって吉と出たのである。吉田さんは「地域を元気にしたいという思いをより強くした」と語る。

 吉田さんは2013年6月に、美波町に「株式会社あわえ」という新会社を設立した。ちなみに「あわえ」とは、美波町の方言で「路地」のことを言う。

 新会社「あわえ」は、美波町の文化や地域コミュニティ、漁業や農業といった地域産業の保護や振興を図りながら、地域活性化を推進する事業会社である。地域資源を磨いて地域を元気にしたいとの思いからだ。サテライトオフィスの誘致や起業支援をはじめ、地域内の有休資産の再生や活用、地域産品のブランディングの推進、さらにはITを活用した新たなサービスの模索などである。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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