リーマンブラザーズが「即死」した理由とは?
サブプライム・ローンの破綻、これは正確には、2007年から問題化し、2008年に破綻した。まず2007年、アメリカの大手証券会社・ベアスターンズの傘下にあるヘッジファンドが、サブプライムで巨額の損失を出し、経営破綻した。これがきっかけで、世界的な金融不安が始まった。
そして翌2008年、例のパッケージングを多く扱っていたリーマンブラザーズとAIG生命(米最大手の証券会社と生命保険会社)が経営破綻した。いわゆる「リーマン・ショック」だ。今度こそ掛け値なしに、アメリカのバブル崩壊だ。
サブプライム・ローンの怖いところは、その運用に「レバレッジ」(てこの原理)が使われていたということだ。レバレッジとは、先物系の信用取引などで使われる手法だ。先物取引とは、金融商品や現物商品の将来的な値動きを予測し、「数ヵ月後の売買契約」をあらかじめ行う。
そしてその数ヵ月後、自分の“売り予想”や“買い予想”が世の動きと合致していれば、利益を得られるという取引だ。そしてその取引では、レバレッジが使われる。いや正確には、その証拠金取引でレバレッジを利かせることができる。証拠金取引とは、少ない金を手付金として大きな額の売買契約を結ぶことで、例えば10倍のレバレッジが利いた証拠金取引なら、100万円を証拠金にすれば、1000万円の売買契約を結んだことになる。
そうすると、予想通りに利益を得られるときには10倍の金がもらえるが、予想に反して損失が出たときには10倍の支払いを強いられることになる。実はこのレバレッジ、ヘッジファンドに対しては、すでに規制があった。1998年にヘッジファンド最大手のLTCMがロシア国債に大きなレバレッジを利かせて経営破綻したため、それを機にレバレッジ規制がかけられていたのだ。だから今回のサブプライムでは、レバレッジはせいぜい3~4倍と傷は浅めだった。
ところがその規制、投資銀行や生保、証券にはかけられていなかった。だから多くの金融機関は、なんと20~40倍ものレバレッジを利かせて信用取引していたのだ。そしてそのせいで、金融界の巨人ともいえるリーマンブラザーズやAIG生命といった大手金融機関が、あっという間に即死したのだ。
ブッシュから政権を引き継いだ直後のバラク・オバマ大統領は、就任早々困難な局面に立たされた。バブル後の処理は、下手に対応を誤ればアメリカ経済は撃沈し、日本で言うところの“失われた10年”とやらの戦犯扱いされてしまうぞ。
でも、オバマの判断は速かった。オバマは、リーマンブラザーズは救済せず、AIG生命を公的資金投入で救済した。いろいろ批判されることも多い決定だが、決断が遅いと手遅れになるという日本の失敗から学んだ迅速さではあった。
結局アメリカは、対処の速さも功を奏して、日本のバブル後よりはるかに速く、株価の方は持ち直した。しかし、実体経済に与えたダメージも大きく、こちらの回復にはまだまだ時間がかかりそうだ。
そして、ここでもたもたしている間に、中国に経済力で急迫されてきた。つまり、リーマン・ショックは、世界経済の覇権がアメリカから中国に移る転換点となった可能性があるのだ。どうする? オヤジが慣れないビジネスヤクザ路線で大ヤケドして、のたうち回っているところへ、すごいガタイの大男がにじり寄ってきたぞ。いよいよ世界経済の組長交代劇か!?