本来の脳力を発揮できる手法

 中でも、学校創設以来最低のIQを記録し、「教育不可能(ineducable)」とされていたバーバラを教えた体験から、彼は多くのヒントを得た。彼女の姉が非常に優秀で美しいことを知らされていたトニー・ブザンは、初めてバーバラを訪ねたとき、姉と勘違いしたという。知的な会話を楽しむことができ、成績がクラスで最低とは思えなかったのだ。しかし、家庭教師を始めてからしばらくしても、彼女は「落第点」を取り続けていた。まるで探偵のようにその原因を探っていると、ある日バーバラが書いたエッセイをきっかけに問題が明らかになった。

 彼女は英語のアルファベットではなく、独自の文字を使っていたのだ。自分にしかわからない記号で書いているが、そのエッセイを何度でも寸分違わずに音読できた。これは、天才的な才能といえる。転勤が多い家庭に育った彼女は読み書きをきちんと習得していなかったのである。トニー・ブザンから英語の読み書きを学んだバーバラは、めきめきと成績を上げ、数ヵ月後にはクラスで一番になった。そして、IQテストのスコアは145超と、学校創設以来最高の数値を記録したという。

 こうした経験を糧に、トニー・ブザンは誰もが、無理なく、本来の脳力を発揮できるようにするための独自の手法を編み出した。中でも、一般のノートとは全く異なるマインドマップには、さまざまな知的機能を動員して脳力を強化するための工夫が凝らされている。

脳は使い方しだいトニー・ブザンのプロフィールをマインドマップで表したもの(『新版 ザ・マインドマップ』p.22)
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