小学校時代の体験から、「脳の取説」を求め続けたトニー・ブザンは、いかにしてマインドマップを考案するに至ったのか? ThinkBuzanマスター・トレーナー兼シニア・ライセンス・インストラクターとして、ブザンから直接聞き知ったエピソードを近田美季子氏が語る。

Nature or Nurture? (生まれつき、それとも育むもの?)

「頭の悪い人なんていない、頭の使い方が悪いだけだ」と子どもの頃に確信したトニー・ブザンは、「頭をうまく使う方法」を探って科学者のように実験を繰り返した。

 念願の「脳の取説」は、学生として自分が学び体験したことや家庭教師として経験したことを土台に、約25年間かけてようやく完成した。

 その後も、トニー・ブザンは脳についての最新情報をフォローして常に進化しているが、彼が当初から提唱してきたことの適切さが脳研究の進歩によって証明されることも少なくない。

 小学生の頃は、「頭がいいってどういうことで、誰が決めるの?」と、事あるごとに先生に質問して困らせたトニー・ブザンは中学時代に再び大きな疑問を抱く。そのきっかけとなったのは読書速度の測定だった。

 彼が14歳のとき、それが試験だと生徒には明かされずに一連の知能テストが実施され、その中に読書速度の測定が含まれていた。数週間後に1分当たり213語という結果を手渡された彼は、「かなり速い」と思って最初は上機嫌だったが、先生の説明を聞いて失望した。クラスの平均が1分当たり200語で、最高記録は同314語であることを知ったからだ。