今回は、いよいよ今回の民法改正の要点を説明させていただきます。特に重要なポイントをピックアップしながら、ビジネスシーンがどのように変わっていくのかを考えます。
今までの説明の中でも何度か説明しましたが、改正の目玉である次の3点に絞って説明を加えていくことにしましょう。(1)法定利率の引き下げ、変動制導入の導入、(2)欠陥品に対する対応策、(3)個人保証の原則禁止、の3点です。その他の改正事項は最後にまとめて掲載しておきます。
【1】法定利率の引き下げ
――最も影響を受けるのは「損保業界」
現行民法404条では「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は年5分(5%)とする」という法定利率の規定が置かれています。
しかしながら、現在の市場金利は変動制が採用されている上、普通預金で現在の相場をみると何と0.01%~0.15%という低金利の状態になっています。
もうおわかりですね。トラブルが長引けば長引くほど、回収可能金額が預金よりも多額のものになり、結果として投資をしているのと変わらないということを。
そこで、今回の改正では、法定利率につきましても、市場の動向に合わせて、年3%に改正することになりました。また、市場の変動の可能性があることに配慮しまして変動制を導入することになったのです。この改正と同時並行的に商事法定利率についての規定も削除され、商売であるか否かを問わず法定利率が年3%に改正されることになりました。
とはいえ、本改正についてあまりピンとこないという方もおられるでしょう。
どういう場面で影響があるのかと言いますと、あなたが勤める会社が取引先と遅延利息を定めずに契約を締結したとします。そして取引先の支払いが遅れた場合、毅然とした対応をとるのであれば、相手方に対し利息も請求しますね。
その際、今回の民法改正によって、あなたの会社が利息を請求する際の金額が、今までよりも低い金額となってしまうのです。
ところで、法定利率の改正で一番影響を受ける業界があります。損害保険業界です。
人身損害の損害賠償請求を算定するにあたり、変動制になると逸出利益の算定をどうすればいいのかわからなくなってしまうのです。損害賠償を支払っている時点では、将来の利息なんてわからないからです。
そこで、損害賠償請求時に混乱を回避するため、改正民法は「将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、損害賠償の請求権が生じた時の法定利率によってこれをしなければならない。」という規定を置きました。