ISAKを訪れた日には、“Design Innovation”の一環として“Design Innovation: Designing Student Activities(デザイン・イノベーション=クラブ活動をデザインしよう)”というセッションが開かれていた。どんなクラブ活動をやるかも自分たちで決める。生徒たちはタイ、マレーシア、アメリカなど15ヵ国から集まった

長野県軽井沢町にある「インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)」では、「多様性」「課題設定力」「困難を乗り越える力」の3つを大事にしながら、世界中から集まった子どもたちを対象に教育をしている。

投資銀行の世界から開発途上国の支援、さらには教育界へと転身した代表理事の小林りん氏は、自らの経験を踏まえつつ「不完全なリーダーほど、じつは強い」と言う。BCGパートナー&マネージング・ディレクターの平井陽一朗氏も、「これからは調整型の人間でないと、リーダーにはなれないだろう」と語る。

なぜ今、「オレオレ型」のリーダーではチームをうまく引っ張れないのだろうか?教育論を語った前編に引き続き、後編では不確実な時代に必要なリーダーシップのあり方について二人が意見を交わした。
(構成/曲沼美恵 撮影/DOL)

「まんべんなく」は失敗する
何かを諦めることからすべては始まる

平井 ところでさ、りんちゃんの経歴についても少し聞きたいことがあるんだけど、どうして日本の高校辞めてカナダの全寮制に入ろうと思ったの?

小林 半分は自分の得意分野を伸ばす方がいいだろうと思ったのと、半分は現実逃避かな。日本で通っていたのが国立の付属校だったから、まんべんなく5教科できなきゃダメですよというプレッシャーをすごく感じたのね。私はそもそも「英語満点、数学赤点」みたいな出来・不出来の激しい生徒だったから、そういうのから逃げたかったのかもしれない。

平井 カナダの高校を出た後はどうして日本の大学に入ろうと思ったわけ?

小林 まず、向こうに行って初めて、自分のやりたいことはこれなんじゃないか、というものが見つかった気がしたのね。

 留学先のカナダの学校では「あなたの得意なことは何ですか?」「何にexcel(秀でようと)していますか?」というのを、すごく聞かれた。日本で評価される「なんでもできる子」は、向こうではむしろ、「なんにもできない子」だとみなされる。まんべんなく秀でていることよりも、何か一つでもいいから、「これだけは誰にも負けない」という強烈な個性を持っていることが大事だよ、と教えられた。

 だから、「自分はどんな人間なのか」「本当は何がしたいんだろう」と必死に考えて、開発途上国のためになることを何かしたい、と思ったの。そこで、具体的に思い浮かんだのが外務省とか当時の海外経済協力基金(現・国際協力銀行)で働くということ。それだったら、日本の大学に入った方がいいんじゃないか、と思ってそこから必死に受験勉強をして東大に入った。