国連の調査によると、化学兵器を使用したのは、「アサド軍」ではなく、「反アサド派だ!」とはっきり書いてある。

 もちろん、アサド軍も使った可能性はある。もしそうであるなら、空爆の理由が「サリンガスを使った事」なのだから、米国は「アサド軍」と「反アサド派」の両方を空爆しなければならないはずだ。しかし米国は、「反アサド派が化学兵器を使った!」とする国連報告を完全に無視して、アサドだけを非難した。

 イラク戦争の場合と同じように、シリアの場合も、米国は「開戦決定の理由に関する重大なウソ」をついたのだ(シリアについては昨年、ウソが事前に暴露され、攻撃は始まらなかった。しかし今年、米国は「イスラム国打倒」の名目で、結局シリア領空爆を開始した)。

 イラク戦争に至っては、ウソからはじまって10万人以上の犠牲者が出たのだから、笑えない事態である。

国家のウソと上手に付き合おう
「情報ピラミッド」という見方とその使い方

 要するに、「どの国もウソをつく」のだが、それが分かっただけでは役に立たない。そこで「情報ピラミッド」という考え方をご紹介しよう。

 世界には、国の数だけ「情報ピラミッド」が存在している(日本情報ピラミッドは存在せず、「米英情報ピラミッド」に組み込まれているが)。その中で影響力が強いのは、下記の4つだ。

 ・米英情報ピラミッド(米英政府に都合のよい情報だけが流されている)
 ・欧州情報ピラミッド(EUに都合のよい情報だけが流されている)
 ・中共情報ピラミッド(中国政府に都合のよい情報だけが流されている)
 ・クレムリン情報ピラミッド(ロシア政府に都合のよい情報だけが流されている)

 独裁国家である中国やロシアのメディアは、いってみれば「国家のプロパガンダマシーン」としての機能しかない。だから、彼らに「客観報道」を求めるのではなく、「ああ、こういうプロパガンダをしているな~」と、冷めた目で見ることが重要である。