「空港や港での水際作戦には限界がありますから」。エボラ出血熱対策で第一線に立つ感染症専門家は、エボラが日本に上陸する可能性を問われるたびにこう繰り返す日々だ。

わずか80~800ナノメートルの大きさのエボラウイルスが、世界を恐怖に陥れている
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 エボラウイルスの潜伏期間は最大21日間。空港で検疫を徹底したところで、症状のない感染者はすり抜けてしまう。世界保健機関(WHO)の発表によると、感染者数は世界で1万人に迫り、死者は4900人近くに及ぶ(19日時点)。WHOは、12月初旬には週に最大1万人もの新たな感染者が発生しかねないとの警告を発した。

 検疫による水際対策に限界がある以上、国内で感染者が出ることは覚悟せざるを得ない。肝心なのは、感染者が出た後にいかに封じ込めるかだ。米国やスペインでは、入国した感染者の治療に当たった医療従事者が二次感染した。

 その点において「世間が思う以上に、日本の受け入れ準備は整っている」と国内の専門家は強調する。国内にはエボラなど危険性が高い感染症患者を受け入れる特定および第一種感染症指定医療機関が全国に45カ所あり、手順を徹底しているからだ。

 ただ、ヒヤリとするケースはあった。沖縄県でリベリアに滞在していた男性が帰国後に発熱し、感染症指定病院ではなく、一般の医療機関を受診。防護具なしに治療が行われ、採血した血液も通常通り扱われたのだ。幸い、男性は、マラリア感染と判明した。