エボラやデングだけではない
世界で続く感染症との戦い

 エボラウイルスがアフリカ西部で猛威をふるっている。患者や遺体の血液・体液との接触で感染し、いったん感染すれば有効な治療方法がないため、致死率は高い。極めて危険な感染症であり、関係各所が啓発と対策に努めている。

 今年8月、海外渡航歴のない日本国内でのデング熱感染者が発見された。デング熱は熱帯・亜熱帯地域で流行が拡大しており、国内での感染事例はここ70年余り報告されていなかった。にもかかわらず、今回は渡航歴のない患者が東京都を中心に発生し、その数は150人に上っている。厚生労働省のホームページでは、デング熱についての情報提供と頻繁な更新を行い、国民への注意喚起を行っている。

 世界では、エボラウイルス以外にも、新たな感染症として現在、鳥インフルエンザウイルス(H7N9)のヒト-ヒト感染や、中東から欧米へのコロナウイルス(MERS-CoV)感染拡大がWHOにより報告されている。現時点では治療も予防も困難なこれらの新興感染症は、人類にとっての新たな脅威だ。

 感染症との戦いとは、世界中で土地を切り開き、民族が接触・拡大・交流を深めてきた、人類の開発と戦争の歴史と密接に関わっている。衛生状況の改善、抗菌薬や血清・ワクチン等の確立により根絶や治療方法確立に至った感染症(例えば天然痘)がある一方で、中世の欧州で黒死病と恐れられたペストは、最近も中国内陸部で死者を出すなど、小規模ながらも流行を繰り返している。

 20世紀初頭にスペイン風邪として猛威を振るったインフルエンザのような、ウイルスの進化(突然変異)が恐れられている感染症もある。古くから知られている感染症として予防・治療の余地がありながら地域によっては流行が続いている感染症は、まだまだ相当ある。例えば、参考1(海外で注意しなければいけない感染症)がそれらに該当する。

<参考1>