厳しい経済情勢のなか、「部署間対立」が激化する会社が増えている印象があります。そうした状況下では、課長にも多くのストレスがかかります。なかには、敵対する部署に精神的な圧迫を受けるケースも……。そんな事態を招かないために、絶対に押さえておくべきポイントがあります。
集団のなかでは、
必ず政治的闘争が起こる
ビジネスマンにとってもっとも過酷なのは、社内の派閥どうしの関係が不健全な状況にあるときではないでしょうか。
不健全な状況は、大きく2つに分かれます。まず、「派閥どうしが排他的な関係にある状態」。これは、相手の派閥を排斥しようという力が働き、水面下で闘争が起きている状態。
もう一つが、「派閥どうしが敵対的な関係にある状態」。「排他的な状態」がエスカレートしてて、闘争状態が顕在化している状態を指します。
会社がこのような状態に陥ったときに、どのように立ち振る舞うべきか、ビジネスマンは深刻な悩みに直面することになります。
ただ、私は、あらゆる会社はこのような状態に陥る可能性を秘めていると考えています。人間の集団である会社では、必ず政治的闘争が起こりうると認識しておいたほうがいいと思うのです。
なぜなら、会社はひとつの意思をもとに運営されなければならないからです。社内に複数の意思が存在するときには、必ずひとつの意思が優位に立ち、権力を掌握するまで闘争が繰り広げられます。それは、人間社会の宿命のようなものです。
私が、それを実感した経験があります。
リクルート時代に、起業支援の雑誌の編集長をしていたときのことです。当時、女性2人が共同経営で起業するケースが非常に多かったので、「女性が2人で会社をつくる」という特集を組んだことがあります。編集部で手分けをして、10社ほどの会社を取材。志を同じくする共同経営者の2人が生き生きと働く姿を写真に収め、希望に満ちた誌面をつくりました。
しかし、その2年後──。
追跡取材をした結果、驚くべき現実に直面しました。なんと、すべての会社で共同経営者の2人が袂を分かっていたのです。
トップの2人は、初めは志を同じくしていたのかもしれませんが、そもそも違う人間です。2人がまったく同じ価値観・信条をもっているなどということはありまえません。事業を進めていくなかで、意見が食い違うことも当然あったに違いありません。
それが、政治闘争に繋がっていきます。2人は自分の影響力を強めようと、スタッフたちをまとめて派閥をつくりはじめます。そして、勢力争いを展開。最終的に、どちらかを放逐するまで戦い続けたのです。
1社や2社ではありません。すべての会社で、このようなことが起こったのです。いささかショックを受けましたが、私は、これが組織の現実なのだと受けとめざるをえませんでした。
そもそも、「共同経営体制」は幻想なのだと思います。組織において、複数の者が対等に権力をもつなどということはありえません。権力は必ず集中します。そして、パワー・バランスが崩れたときには、権力をめぐる政治的闘争が必ず起きるのです。会社を生き抜くためには、その現実を冷徹に受け止めておくことが欠かせません。