課長は、「政争」からは
できるだけ距離をとる
では、こうした状況下では、課長は何を指針に行動すればよいでしょうか?
まず第1に、政争からは距離をとることを意識すべきです。課長は、社内の権力構造の末端です。社内政治の主要プレーヤーではなく、あくまで現場を指揮する「官僚的」な位置づけにあります。このことを、しっかり認識しておく必要があります。
この点ついて、マックス・ウェーバーの『職業としての政治』(脇圭平訳、岩波文庫)に、参考になる部分があります。原文に忠実に訳された本書はやや難解なので、ウィキペディアに掲載されている該当箇所(同書40~41頁)の要約を引用します。
「官僚は専門家でありかつ非党派的であるべきであり、政治的闘争に巻き込まれてはならない。党派性や闘争は政治家の本領であり、官僚とは全く異なる責任があるのだ。官僚はもしも上部の命令が自分の意見と相容れないものであったとしても、それが信念であるかのように執行すべきである」
これは、会社の上層部と課長の関係に重ねることができます。経営方針は役員会で決定されて、その方針に従って現場を動かすのが課長です。経営方針を闘わせる上層部は、否応なしに政治的にならざるをえませんが、課長は本来そのような立場にはありません。そこに巻き込まれるような言動をとるべきではないのです。
もちろん、自分の主義・主張をもつのは大切なことです。部長、役員と出世したときには、その主義・主張の「強さ」があなたの政治力の根源となります。しかし、課長時代には、その主義・主張を強く打ち出すことには慎重を期すべきだと思います。特に、派閥抗争が起きているときに、そのようなことをするのはきわめて危険です。
むしろ、プロフェショナルとしての課長に徹するべきです。たとえ、自分の主義・主張とは異なる指示が下りてきたとしても、フォーマルなルートを辿って指示されたものであれば、それを忠実に実行するのがプロフェショナルとしての課長です。
そして、プロフェショナルに徹していれば、誰からも非難される筋合いはありません。仮に、派閥抗争を背景に、あなたの仕事を面白く思わない勢力からインフォーマルな圧力を受けるようなことがあっても、「会社の指示に従うのが私の仕事です」と応じれば反論の余地はありません。
この大原則を守ることが、あなたの身を守ることに直結するのです。