財政審は、

「各種加算・扶助を加えた有子世帯の生活保護水準は、低所得の有子世帯の消費水準を上回っている。有子世帯の加算・扶助のあり方・水準について総合的な見直しが必要」

 としており、断じて、

「子どものいる低所得世帯で生活保護を利用していない世帯に、積極的に生活保護利用を働きかけ、子どもにせめて生活保護水準の生活と生育環境を」

 とは主張していない。

 なお、この資料には、今年8月に閣議決定された「子供の貧困対策に関する大綱」も引用されている。まるで、火炎放射器を手にした放火犯と、ガソリンを手にした放火犯と、消防団の小さな消防車が相乗りしているようだ。

「生活保護の中に新しい格差を生むな」
阿部彩氏の主張

 基準部会委員である阿部彩氏(国立社会保障・人口問題研究所)は、厚労省の事務局による資料説明に引き続き、すぐ「大事なことに気づいた」と発言した。

 厚労省の計画では、ひとり親世帯においては、生活保護世帯の生活扶助費+児童養育加算+母子加算を、一般世帯のひとり親世帯の消費実態と比較することになっている。しかし阿部氏は、

「そういう性格の問題ではなく、母子加算は、母子家庭の特別な状況に応じたもの」

 と指摘した。なお、この「収入と消費を比較する」ことのおかしさについては、後述のとおり、引き続いて別の委員が問題にした。

 阿部氏によれば、ひとり親世帯はそうではない世帯に比べて圧倒的に不利である。そのことは、数多くのデータによって示されている。さらに、

「生活保護のひとり親世帯は、一般の二人親世帯との均衡がとれているべきなんです」

 と発言した。もちろん、生活保護の二人親世帯も、一般の二人親世帯との均衡を問題にすべきなのであり、児童養育加算はそのための加算である。

 阿部氏は続けて、

「母子加算はその上で、ひとり親であることに対する加算です。それを考慮するべきです。二人親がひとり親になったときに、同じ生活水準を保つための母子加算です。どれだけなくては二人親と同じ生活水準を保てないのかを検証すべきです」

 と述べた。低所得のひとり親世帯と生活保護のひとり親世帯を比較するということは、

「ひとり親世帯の子どもは、ひとり親世帯なりの生活しかできない」

 という現実の追認となる。また、生活保護世帯の中に、

「生活保護であり、さらにひとり親であるというハンディを背負わされてしまう子ども」

 という格差を生んでしまう。