岩田氏は、

「データ的に、母子加算では子どもが増えたら子ども一人あたりの金額が減ります。(検討には)使えない結果しか出ませんでした」

 と指摘し、水準均衡方式のもとで、個別の費目を考慮したり類型を別にしたりすることが原理的に可能なのかどうかを問題にした。岩田氏は、

「(そういうことを)やるとすれば、新しいマーケットバスケット方式にしなくてはならなくなります。一般世帯に対して、積みあげて比較しなくてはならない。(基準部会では、現在)そのことをやっているのではないか。そういう疑問が膨らんできました。これまで(基準部会で)やってきたことは間違っていたんじゃないかと思います」

 と述べ、さらに、

「生活保護基準額は収入です。これを(一般世帯の)生活扶助相当額の消費支出と比較? (そうではなく)収入と収入を比較しないと困ります。明らかに、何のためにやっているか、非常にはっきりしてしまうような比較です」

 と、2012年以後の財政審・厚労省の一連の「比較」の最大の問題点に釘をさした。続けて、

「比較するなら合理的な比較をしてほしいということです」
 「水準均衡(方式)でやっているのに、どういう費目で(支出を)パーツ分けできるのか、説明してほしいです」
 「生活扶助基準における、根本的な矛盾です」
 「水準均衡(方式)だから『(消費実態を)全部比較すればいい』で差があるかどうかでやってきました。その基本的な考え方を、切り崩して新しいマーケットバスケットをやっているわけです。比較によるマーケットバスケット。そういうやりかたをしますか?」

 と、厚労省の事務局に鋭く迫った。事務局は岩田氏のコメントに感謝しつつも。

「限界がさまざまある中で、一般国民の目から見て信頼感に支えられた制度として運営する必要があるので、いろいろご意見いただきながら、前に進めさせていただきたい。マーケットバスケット方式、5年後の検証どうするのか、今、3年かけての議論、5年後に向けての議論の中でご意見いただければ」

 と述べた。

シングルマザー、子どもまでもが“見せしめ”に?<br />財務省が意図する生活保護世帯への「貧困刑」2014年10月21日、基準部会終了直後。後ろ姿の人物は厚労省・事務局の官僚たち。彼らに生活保護利用者の肉声が届くことはあるのだろうか?

 少なくとも筆者は、実質的な方式の変更に際して根拠らしい根拠も必要な議論もなく、「収入と支出を比較する」という妥当性のまったくない比較を行おうとしている厚労省と、そのような方向性へのプレッシャーを加える財務省に対し、「一般国民の目から見て信頼感に支えられた制度」の運営主体としての信頼を置くことはできない。

 なお、生活保護世帯の子どもたちを主対象とした学習支援については、国による経済的バックアップが削減される方向にある。筆者の住む東京都杉並区でも、区が独自に行っていた生活保護世帯の子どもたちへの学習支援は、自民党区議の強い主張によって見直しが検討されているところだ。生活保護世帯の子どもたちの家庭生活をさらに貧困にし、学校での十分な配慮も確保せず、唯一といってよい将来への希望である学習教室という機会も奪おうとしている現政権に対し、筆者は怒りと悔しさを禁じ得ない。