クラシカルなアルバム「光へ」を全部聴いてみた

安倍なつみ「光へ-classical & crossover」(日本コロムビア、2014)のジャケット(初回版)

「光へ- classical & crossover」

(1)Stand Alone ~NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」より(小山薰堂・作詞 久石譲・作曲)
 クラシカル・クロスオーバーの世界的な普及を促したサラ・ブライトマンがヴォカリーズ(母音だけの歌唱)、ソプラノの森麻季が日本語詞で歌った曲。2009年の作品。D(ニ長調)からD♯(嬰ニ長調)へ転調し、hiF(二点ヘ、ファ)までと音域は広い。「いちばん難しい」と感じた安倍なつみは最初にこの曲を録音したのだそうだ。後半はボレロのリズムになる。サラ・ブライトマンの「Time To Say Good Bye」を思い起こさせる楽想。

(2)ローズ(吉元由美訳詞 アマンダ・マクブルーム作曲)
 ジャニス・ジョプリンをモデルにした米映画「ローズ」(1979)の主題歌。多くの歌手がカバーしているスタンダードである。ゆったりした4拍子。C(ハ長調)でシンプルだが、後半は4度上のF(ヘ長調)へ転調する。

(3)夢やぶれて ~「レ・ミゼラブル」より(岩谷時子訳詞 クロード=ミシェル・シェーンベルク作曲)
 昨年、ロンドンで「レ・ミゼラブル」の初演版演出を前から3列目で見て大泣きしたのだそうだ。コゼットの母親ファンテーヌの歌う「夢やぶれて」は、本田美奈子が2005年に演じ、歌うことに決まっていた。1月に入院する直前まで練習していた曲である。E(変ホ長調)で始まり、F(ヘ長調)へ転じる。安倍は10月24日のライブ(丸の内コットンクラブ)で歌い、「感情を入れ込んで歌うので、なかなかもとに戻れない!」と言っていた。

(4)カーネーション ~NHK連続テレビ小説「カーネーション」より(椎名林檎作詞作曲)
 2011年の作品。原曲よりかなりキーを高くして録音したもよう。このアルバムにはAndanteで4拍子の曲が多いが、「カーネーション」は3拍子。E(ホ長調)からF(ヘ長調)へ転調する。hiF(ファ)まで使う難しいハイトーンを利用したアレンジを軽やかに歌っている。

(5)サリー・ガーデン~風と少女~(Asu作詞 アイルランド民謡)
 アイルランドの古い歌。ペンタトニック(5音音階)のD♭(変ニ長調)。

(6)グリーンスリーヴス~永遠~(吉元由美作詞 イングランド民謡)
 本田美奈子も録音した曲。イングランド民謡。8分の6拍子。安倍なつみはEm(ホ短調)で歌う。

(7)私だけに ~「エリザベート」より(小池修一郎訳詞 ジルヴェスター・リーヴァイ作曲)
 ミュージカル「エリザベート」の代表的なナンバー。皇紀エリザベートが歌う。エリザベートはウィーンの宮廷からしばしば旅行に出て、旅先で1898年に暗殺される。実話だ。音域が高い難曲だが、安倍はよく内容を研究し、見事な表現で気品ある歌唱を聴かせる。岡野が1年前に聴いて驚いた曲。D♭(変ニ長調)で低域から始まるが、高揚してhiF(ファ)まで使う。最後はhiA♭(ラ♭)のフェルマータ。10月24日のライブでも思い切りのよいハイトーンを聴かせてくれた。