意表を突いて日銀が10月31日に追加緩和に打って出た。FRBが10月29日に量的緩和政策第3弾(QE3)の終了を発表した直後だっただけに、グローバルには今後は日銀発で超緩和が継続すると印象付けた。
思い出してほしいのは、2013年5月に当時のバーナンキFRB議長がテーパリングを開始する意図を伝えて、世界中の株価が下がった経験である。新興国通貨は下落して、過剰流動性の時代の終わりを予感させた。
今回、FRBが量的緩和のペースを止めることを決定したことは、仮に日銀が追加緩和をしなければ、世界的な過剰流動性の拡大に打ち止め感を与えたことだろう。
日銀が過剰流動性を増やすことは、投機マネーの資金調達先をドルから円へとシフトさせるだろうと想像させる。それが、今後予想されるドル高・円安の期待形成効果である。なお、もう1つの中央銀行であるECBも、11月6日に理事会を控えている。ユーロドルは、ECBの緩和拡大を催促するようにユーロ下落に動いている。
消費者物価2%を
本当に実現するつもりか!
今回、日銀が追加緩和を実施した理由は、政治的には12月の消費税増税の判断を後押しすることが目的だ。もう1つ、消費者物価の1%割れを回避する目的も重要だ。
すなわち、為替レートが今以上に円安にならなければ、物価上昇圧力は減衰し、2014年10・11月の消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比伸び率は1.0%を割り込んでしまうところだった。黒田総裁は、7月の記者会見で消費者物価は1%を割り込まないという見立てを披露し、それが今回の緩和の伏線になった。
黒田総裁の量的・質的金融緩和の重要な影響力は、期待形成にある。従来から、見通しの達成に「必要があれば躊躇なく(金融緩和の)調整を行う」と繰り返してきた。今回は、物価見通しの達成を2015年度内に実行できるかどうかという展望において、リスクが高まってきたために、1%割れさせないための調整を行ったかたちだ。