情勢は微妙である。10月23日にはサウジアラビアの9月分の供給減少が明らかになり、相場も一時盛り返したものの、その後にイラン高官から減産見送りの方針、との発言もあって「減産せず、市場に任せるのではないかとの見方が強まってきている」(新村直弘・マーケット・リスク・アドバイザリー代表取締役)。

 もし減産の方針が示されなければ、もう一段の下落が必至だ。WTIで70ドル、ブレントで75ドル程度まで落ちてもおかしくない。

 問題は、それが実体経済や金融市場に与える影響だ。

 基本的には、原油価格の下落は、消費者や企業のコスト負担軽減となり、景気にとってプラスである。

 しかし一方で、さらなる下落となれば、金融市場はそれを世界景気減速のサインと受け取り、センチメントが悪化する恐れがある。そして株価が下落すれば、景気にも悪影響を与え得る。

 もう一つ、厄介なのがインフレ率の下押し効果だ。人々や企業の期待インフレ率は、原油価格と連動する傾向がある。これは特にデフレの瀬戸際にある欧州への影響が深刻だが、日本でも脱デフレに水を差しかねない。米国でも足元で期待インフレ率が急低下している。「期待インフレ率が低下すると、消費や企業の投資が先送りされ、総需要が抑制されかねない」(嶋津洋樹・SMBC日興証券シニア債券エコノミスト)。

 いましばらく、原油相場の動向を注視する必要がありそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)