日本銀行が、10月31日の金融政策決定会合で追加金融緩和を決定した。「黒田バズーカ・2」と呼ばれる電撃的な緩和策は、市場に大きな衝撃を与えた。市場参加者は慌てて円売り・ドル買いに動いた。東京外国為替市場で、1ドル=111円まで円安が進んだ。日経平均前日の終値より約800円値上がりして1万6450円を超え、今年の最高値をつけた。

 ただ、この連載では、特定秘密保護法や集団的自衛権行使容認など「やりたい政策」実現のために、内閣支持率維持をなによりも優先してきた安倍晋三内閣は、「消費増税」で景気が冷え込むような局面に陥れば、支持率低下を防ぐために、より一層の金融緩和を躊躇なく繰り出すと指摘してきた(第80回を参照のこと)。「黒田バズーカ・2」は、市場を驚かせたかもしれないが、政治学的には想定の範囲内の出来事だったといえる。

 また、この連載では、財務省がアベノミクスの意思決定から排除されたように見えながら、実際は「アベノミクスの狂騒」を利用して消費増税を実現したと論じた(第82回を参照のこと)。安倍首相が消費税率を8%に上げる決断をした際、財務省No.2の財務官経験者である黒田東彦日本銀行総裁は、「消費増税と脱デフレは両立する」と発言し、それを後押しした。財務省自体も、公共事業や減税措置など経済対策を打ち出すことで、首相の増税決断をフォローした。

 この事実を押さえた上で「黒田バズーカ・2」を考えると、株高・円安で景気を無理やりにでも押し上げて、10%への消費増税を首相が決断する環境を守ろうという意図が見えてくる。いわば、支持率を維持したい首相官邸と消費増税を実現したい財務省の同床異夢的な思惑の一致が、黒田総裁の果断な決断の背景にある。

小渕優子前経産相、地方議員の相次ぐ不祥事:
国民の政治に対する視線は厳しさを増している

 小渕優子経産相が、政治とカネの問題で辞職した。以下のような、様々な疑惑が明らかになったためである。

・小渕氏の地元後援会など4政治団体が催していた「観劇会」で、後援会員らが支払った参加費などの「収入」より、明治座などに支払った「支出」の方がはるかに多かったことへの疑い。

・2008、9年政治資金収支報告書に観劇会の「収入」の記載がないこと、12年の報告書には収支そのものが係れていないことへの疑問。