再び、大連立の「亡霊」が蘇ってきたようだ。
4月10日、時事通信社主催の講演会の中で、渡辺恒雄・読売新聞主筆は次のように語って、自らの政治的欲求を告白した。
「私は大連立論者で、一昨年の暮れにやって失敗した経験があるが、私の大連立の理想というか、考え方っていうのはどうしても将来の安心・安全な社会を作ろうと思ったら、社会保障制度を、安定的に確立したものにしなければならない。その場合、財源はどうするか。その財源としては、もうこれは消費税しかない。税率を10%ないし15%にしなければできない。それをやれば、国民大衆も低額所帯、失業対策などなど、かなり安心できるから、消費も増える。貯蓄よりも消費が増えてきて経済が前進する、そういうふうに考えている次第です」
福田首相(当時)と小沢民主党代表の大連立騒動の際、筆者は、一新聞社の「主筆」が政治のプレイヤーになることに疑義を投げ掛けた。政治的な理想を持つのは一向に構わない。だが、政治の中に手を突っ込みながら、しかも、知り得た情報を一切書かないというのは読者に対する裏切りだとも批判した。
今回の発言で、そうした裏切りが実際にあったことが明らかになった。読売新聞は政党機関紙とどうちがうのか。
大連立騒動の問題は
内容よりも国民の不在
さて、メディア論はひとまず措いておいて、大連立である。
大連立騒動のきっかけは、現在も解消されない衆参のねじれ現象であった。重要法案を通そうとする度に参院で否決され、衆院の3分の2での再議決を余儀なくされていた福田自民党と、党内に総選挙への不安を抱える小沢民主党の思惑が一致したことが、大連立へと駆り立てたのである。
その「フィクサー」となって中心的役割を演じたのが、渡辺氏や中曽根康弘元首相などの政界の長老たちであった。
その先にあるのは、国民投票法による憲法改正の発議であり、全国会議員の3分の2以上による憲法改正の議決である。繰り返しになって申し訳ないが、それが一昨年から再三指摘していた長老たちの狙いだ。
同じ講演の中で、騒動のもうひとりの主役、中曽根元首相がこんな本音を漏らしている。