オタクと嫌われる勇気

岸見 実は最初『ぼんとリンちゃん』がオタクの腐女子の話だと聞いてかなり特殊な作品かなと思ったのです。ところが実際にはすごく普遍的なテーマで、観る人を選ぶような映画では決してないと思いました。

オタクの腐女子を描いた映画だと聞いてかなり特殊な内容ではないかと思った岸見氏だが、実際に観たところ普遍的なテーマを扱った作品だと感じたという。

小林 オタクの人たちって、やはりまだ世間的には誤解されていますよね。かなり偏見で見られている部分がある。

岸見 一般的には、ずっと部屋にこもって他者と関わらず一人で生きているイメージなんでしょうけど、実際はそうではないわけですよね?

小林 今のオタクの人たちは外に出ていきます。たとえばコミケとかには50万人も集まります。情報を得るためにすごくいろんなことをするし、もちろん横のつながりも広がっています。コミケでおもしろいのは、グッズを戦利品として買い集めるんですけど、5人とか10人くらいで「君はあれを買って、自分はこれね」とか、皆で手分けして買いに行く。そういうことをやっている人たちは、すごくアグレッシブです。

岸見 そのように他者との関わりもあるわけですし、いわゆるリア充的な人だとさえ言えるかもしれません。いわゆる引きこもりの人たちとはちょっと違うのですね。

小林 そうですね。表に出てくる人たちは本当に多いです。考えてみると、オタクの人たちはアドラー的な面が強いのかもしれません。人の目をあまり気にしない、自分の好きなことを突き詰める。

岸見 よく親御さんから「子どもがオタクになりそうです。どうしたらいいんでしょう」といった相談があります。「いや、別にいいんじゃないですか」と私は言います(笑)。一つのことにひたむきになる、没頭するというのは、なかなか誰にでもできることではありません。そういう生き方を自分の子どもが選ぼうとしているのであれば、それは困るようなことではなく、むしろ祝福するべきことでしょうと話すわけです。

小林 そうですね。本当にオタクだったらそれを突き詰めて、生かせる仕事をして、お金を稼げるようになれば、何も問題ないんじゃないかと思います。