対談【前篇】では、相手との距離を縮め、印象づける話し方に触れた。
いよいよ【後篇】は、相手から信頼を勝ち取る話し方を紹介。
「話すことは放すこと」という面白い見方から、「若い人がどうしたら自信を持てるか」という面まで! 営業現場のプロ・和田裕美氏とNHKキャスター歴17年の矢野香氏の初対談を最後までお楽しみください。(構成・鈴木雅光)
作家・営業コンサルタント。外資系教育会社での営業時代、プレゼンしたお客様の98%から契約をもらうという「ファン作り」営業スタイルを構築し、日本でトップ、世界142ヵ国中2位の成績を収めた女性営業のカリスマにして先駆者。短期間に昇進を重ね、女性初、最年少で2万人に1人しかたどりつけないと言われる支社長となる。 その後独立し、執筆活動の他、営業・コミュニケーション・モチベーションアップのための講演、セミナーを国内外で展開。 雑誌、テレビ、ラジオなどでのメデイア紹介多数。女性ビジネス本の先駆けとなり、多くの人の啓発活動を中心に活躍中。『世界No.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本』『2015 W's Diary 和田裕美の営業手帳2015』(以上、ダイヤモンド社)、『和田裕美の人に好かれる話し方』(大和書房)、『失敗してよかった!』(ポプラ社)など著書多数。
話すとは「放す」こと!?
矢野 文庫合わせて30万部突破の大ベストセラー『和田裕美の人に好かれる話し方』を拝読しました。
和田 ありがとうございます。
矢野 その中で、とても印象に残ったのが、「話すことは放すこと」という一文でした。
和田 あれはね、「一度言ってしまったらおしまい」ということなんです。言葉は、話した途端、自分のところから離れて独り歩きするものです。たとえば、ちょっとした言い合いをしているときについ感情的になり、言わなくてもいいことを言ってしまうことがありますね。それを言ったらおしまいなのに、最後のとどめを刺してしまうような。
矢野 たしかに、軽い気持ちで口から出た言葉が、相手をとても傷つけていたりすることはありますよね。
和田 だから、自分の言動には十分に注意する必要があります。
矢野 自分が会食のお店をセッティングしたとき、相手から「あなたにしては、なかなかよくできたね」と言われると、傷つきますよね。でも、何も考えずにこの手の発言をしている人が、結構多いのかもしれません。
スピーチコンサルタント。信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。 NHKキャスター歴17年。おもにニュース報道番組を担当し、番組視聴率20%超えを記録した実績を持つ。 大学院では、心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号取得。 現在は、国立大学の教員としてスピーチ研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職、ビジネスパーソン、学生などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。 相手に与える印象の分析・改善力に定評があり、話し方・表情・動作を総合的に指導。全国から研修・講演依頼があとをたたない。 著書に、ベストセラーとなった『その話し方では軽すぎます!――エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)などがある。 【著者オフィシャルサイトはこちら】
和田 「あなたにしては……」って余計ですよね。最初から下に見られていた感じがして気持ちがダウンします。相手にムカッとするだけならまだしも、「私ってダメだなあ」と自信をなくしてしまい、やる気もダウンします。できれば、「わあ、すてきなお店。さすがのチョイスですね」と、真正面からほめてもらいたいですよね。うれしくなって気持ちが上がるので、自尊心も上がるのです。言葉は、相手の自尊心を傷つけて、自分に従わせるように仕向けることも、その逆も簡単にできるのです。だからこそ、言葉を使うなら、相手をワクワクさせて可能性を引き出すような言葉を使いたいですよね。
矢野 夫婦関係でも、上司と部下の関係でも同じことが当てはまりますね。
和田 はい。言葉で相手の能力を奪っているような人は、本当は本人が自信のない人だと思います。そういう相手が目の前にいて苦しい人は、「この人は自分のほうが上だと自己顕示だけしたい器の小さな人なんだ。かわいそうに」と心の中で受け止めて笑うようにしてほしいです。真正面から受けずにかわしてほしいのです。相手に何を言われても、自分が損なわれることはありませんから。