「矢野式」学生に自信をつけるトレーニング
矢野 私は現在、国立大学で教鞭をとっていますが、講義の中で大学1年生に、「自分の強みや長所と思うところを書いてください」と言うと、書ける学生が少ないのです。そこで、グループをつくって、他の人から見たその人のよい部分を客観的に書いてもらうと、それが気づきになり、自信へとつながっていくようです。私がNHKにいたときは、上司から「自信がなかったとしても、画面に出るプロとして自信を持っているフリをしろ」と言われました。その意味で、自信があるかのように振る舞う身体の使い方も大事だと思います。
和田 気持ちと行動は両輪だから、気持ちが落ちているときは「行動」で上げていくことで相当改善できますよね。
矢野 人前に出るとき、おどおどしていると、自信がない人のように見られてしまいます。それが信頼感の喪失にもつながってしまいます。せめて「歩き方」だけでも堂々としたものにすれば、自信があるように見えますね。
和田 そうそう、だからこそ、人には多少の演技も必要なんですよね。たとえば、講演などでちょっと間違ったことを言ってしまっても、堂々と話を続けていれば、大概の人は間違ったことに気づかない。致命的な間違いはNGですが、勘違い程度の間違いでうろたえてしまうと、他の話が正しくても、聴衆から信頼されなくなってしまいます。舞台上の役者が演技で少々間違ったとしても、それに気づく観客って、ほとんどいないじゃないですか。そもそも今観ている演技しか知らないのですから、自信を持って演技を続ければ気づくはずもないのです
矢野 ステージ感覚を持てと。
和田 そう。人生はまさにオン・ステージ! 自分が主役のステージなんですよね。
矢野 なるほど。よくわかりました。本当にありがとうございます。今回は2回にわたっての貴重な初対談、すごく学べて楽しかったです
和田 本当にあっというまでしたね。こちらこそ矢野さんのお話、とても勉強になりました。本当にありがとうございました。
矢野 香(やの・かおり)
スピーチコンサルタント。信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。
NHKキャスター歴17年。おもにニュース報道番組を担当し、番組視聴率20%超えを記録した実績を持つ。大学院では、心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号取得。
現在は、国立大学の教員としてスピーチ研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職、ビジネスパーソン、学生などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。
相手に与える印象の分析・改善力に定評があり、話し方・表情・動作を総合的に指導。全国から研修・講演依頼があとをたたない。
著書に、ベストセラーとなった『その話し方では軽すぎます!――エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)などがある。
【著者オフィシャルサイト】http://www.authenty.co.jp