75歳で必要な資金は、
年金以外に欲しい資金(月額)×240(=12ヵ月×20年)

野尻 う~ん。全額解約、この点はちょっと中野さんと考え方が違いますね。私は75歳ですべて止めても良いと言っています。95歳まで生きるとして、年金以外に月10万円の資金が欲しいとしたら、取り崩す期間は20年間ですから、75歳の時点で2400万円が手元にあれば良い。そうなるように、75歳まで使いながら運用するのです。

野尻哲史(フィデリティ退職・投資教育研究所所長)一橋大学卒業。国内および外資系の証券会社の調査部を経て、現職。日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。主な著書に『投資力』(日経BP社)、『老後難民 50代夫婦の生き残り術』『日本人の4割が老後準備資金0円』(ともに講談社+α文庫)

中野 でも、75歳の時点で2400万円の資金があるわけでしょう。それをすべて預金にするのではなく、そのまま運用を続けても良いのではないでしょうか。

野尻 ただ、ゴールまでを描いた青写真がないと、なかなか運用に入ってくるのにハードルが高くなるんですよね。だから、運用し続けられる年齢を75歳で一旦区切って、それまでに2400万円の資金を残すためには何%のリターンで運用すれば良いのかということを計算できるようにしているのです。

中野 大体、どのくらいのリターンで運用すれば良いと考えていますか。

野尻 年3%程度でしょう。

中野 でも、年10%のリターンを狙っている人って多いですよね。そういう発想だと、販売金融機関に付け入られて、手数料が非常に高かったり、ハイリスクな投資信託を買わされることになるので、要注意です。

 50代でも70代までなら20年、95歳までだと40年くらいあるわけですからね。手数料が低くて、世界中に投資先を分散してあるような良い投資信託を少しずつ、積み立てで買っていく。これは、つまらない方法かもしれませんが、数年後、十数年後に大きなお金に育つのです。ここを知らない人が多い現状が本当に残念ですね。

(取材・文 鈴木雅光 撮影 宇佐見利明)